研究課題/領域番号 |
19K02355
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
田中 勝 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (70202174)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 伝建地区 / 生活文化継承 / コミュニティ創成 / 居住システム / 町並み学習 / ペーパークラフト / 教材開発 |
研究実績の概要 |
令和3年度は研究期間の3年目(最終年度)として、伝統的な住まい方や生活文化を育む教材等の開発を行う予定であった。しかしながらコロナ禍の影響により伝建地区の現地調査等を行うことがほとんどできなかったため、昨年度の調査計画を含めて当初予定していた内容をそのまま実施することは困難と判断した。このため次のように研究を進め、研究期間を1年延長することとした。 1)伝建地区の空き家対策とコミュニティに関するインターネット上の文献資料の収集・分析を継続した。また、現地調査が実施できないことからモデル地区(A市、B市、C村)の町並み保存事務担当者を対象にコロナ禍における町並み保存の取組や空き家対策についてEメールや電話による把握を行った。 2)モデル地区の中からA市とB市を対象に空き家対策の現状を把握するための現地調査(聞き取り調査と建物調査)を実施した。A市では伝建地区における空き家の実態及び利活用をとりまとめた報告書を入手し、併せて担当者より地域密着事業者による空き家活用事例や移住体験施設の運営について情報を得た。B市では市全域を対象とした空家等対策計画の策定状況、伝建地区内の不良度ランク別空き家の実態等の情報を収集するとともに、現地確認により利活用の可能性を検討した。 3)伝建地区の伝統行事・祭礼等の再開までに可能な代替作業として、過年度に全国の伝建地区を対象に実施した「重要伝統的建造物群保存地区の民家・町並み・まちづくり学習に関する調査」結果から、町並み学習の対象となった地区固有の生活文化を構成する要素の抽出を試みた。 4)過年度の科研費で開発した民家ペーパークラフトを利用した山梨大学学生による家庭科住居領域の授業指導案(ワークシートを含む)やリーフレットを資料として学校教育教材の内容を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和3年度もコロナ禍の影響が続き、研究に着手した段階で計画していた研究内容をそのまま実施することは極めて困難となった。本研究は北海道から沖縄県まで全国各地に分布する歴史的町並み・集落における伝統的建造物群、及びそこで暮らす人々や生活文化全般を対象とした現地調査による実証的研究に手法上の特色があるが、新型コロナウイルス感染がほぼ1年を通して全国的に拡大したことの影響は大きく、移動の自粛や調査受入先との調整が困難化する中で移動及び現地調査に伴う感染リスクを避けつつ研究を前進させる効果的な方法を見つけることができなかった。それでも感染者数が減少傾向にある時期に2つのモデル地区を対象とした最低限の現地調査を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染拡大は現在も全国規模で推移しており終息の見通しは立っていない。そのため現地調査が困難な状況が今後も続くことも想定しながら研究を進めたい。伝建地区は全国に広く分布していることから今後の状況変化の中で感染者数の少ないエリアの伝建地区を調査対象として組み替えることも考えられるが、各伝建地区には固有の空間構成や生活文化の歴史的蓄積があり、加えて、これまでの研究内容との連続性や研究環境・条件等を総合的に判断し、当初予定していたモデル地区での調査実施の可能性を探る方が質の高い研究成果につながると考えられるためモデル地区は変更しないこととしたい。 現地調査は本研究課題の成果獲得には必須のため、今後も各地域の感染状況を注視しながら現地調査可能なタイミングやエリアを探し、研究を前に進めていきたい。各地への移動が不可能な間はホームページや電子メールによる情報収集、あるいはZoomミーティングによる聞き取り調査等を実施するなど状況にあわせた研究実施体制とする。 各地の生活文化や居住システムの把握に関わっては、コロナ禍の影響により各種伝統行事の開催が中止となるケースが想定されるが、生活文化カルテ作成や空き家対策の検討に必要な調査項目であるため、自治体(教育委員会)及び町並み保存団体を対象としたアンケート調査を令和4年度前半に実施したい。これらの調査結果を取りまとめ、研究の最終年度には伝建地区にみられる伝統的な住まい方や生活文化を育むための学校教育教材を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
全国的な新型コロナウイルス感染拡大に伴う移動の自粛(出張困難)や調査対象地域の受入環境により令和3年度に計画していた出張(資料収集、現地調査)を取りやめたこと、また同様の理由により予定していたアンケート調査実施を延期したこと等により次年度使用額が生じたものである。 コロナ禍の影響を受けることの少なかった研究初年度(令和元年度)末以降、年度ごとに計画していた現地調査及び資料収集のための出張やアンケート調査による現状把握はいずれも本研究課題の達成に欠かせないものであり、それらの成果をもとに研究期間の最終年度に教材開発を行う必要があるため、次年度使用額については、これまでの研究実施計画を踏まえながら状況の推移にあわせて物品費、国内旅費、その他(アンケート郵送料等)等として適切に使用する。
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