研究課題/領域番号 |
19K02362
|
研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
中川 まり 大妻女子大学, 家政学部, 准教授 (00649634)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 共働き家族 / 父親の育児・家事参加 / 母親ゲートキーピング / 勢力関係 / 母親の就業 / 家計分担 / 性別役割分業 |
研究実績の概要 |
令和3年度は単著図書の発刊、依頼原稿執筆、研究論文の投稿・掲載を行った。令和2年度から延期のインターネット調査はコロナ禍による調査対象者の心理的配慮のため令和4年度に再延期した。実績概要を示す。1.単著図書 中川まり,2021,『ジェンダー化された家庭内役割の平等化と母親ゲートキーピング』,風間書房,東京,263ページ.子育て期である共働きの父親と母親を対象に父親の育児・家事参加の要因、勢力関係を問題とした。本書は母親ゲートキーピング仮説を援用し、母親の就労や母親から父親への家事・育児参加の促進によって父親の育児や家事参加が進み、母親が家庭役割を抱え込まないなどの要因を量的方法により明らかにした。また脅威仮説を援用し、父親の家族と仕事との葛藤や外部サポートの重要性も示唆した。2.依頼原稿は3本である。日本家族社会学会依頼の『家族社会学事典(仮)』(2023予定)の分担執筆を担当した。他、中川まり,2021,「高学歴女性のライフコースとウェルビーイング」『東京女子大学女性学研究所年報』31:22-27、中川まり, 2021, 「新刊紹介.伊藤 純・斎藤悦子編著『ジェンダーで学ぶ生活経済論[第3版]』」『日本家政学会誌』72(10) :706.である。3.研究論文 中川まり,2022(印刷中),「共働きの母親における相対的資源と稼得役割」『大妻女子大学家政系研究紀要』.共働きの母親を対象に、夫婦間の家計分担割合の規定要因について母親の雇用形態による分析をした。二次データによる多母集団分析の結果、母親は雇用形態にかかわらず、年収が多いほど夫婦間での母親の収入割合が高く、勢力を高めること、また母親の収入が多くなるには、高い学歴と結婚後の正規雇用継続が重要である。結論として母親は高い収入を得ても家計分担を低く抑え、母親が稼得役割は父親という性別役割規範を維持していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、二次データ分析、先行研究レビュー、国内学会と国際学会での発表、論文投稿を計画した。二次データ分析、先行研究のレビューは計画通りに実施した。研究成果の発表は、2回の国際学会での発表と1回の国内学会での発表、台湾成功大学との研究交流会での報告を行い、計画を上回る進捗となった。論文投稿については、令和3年度に計画している単著著書出版の執筆を優先するために投稿は行っていない。また計画にはなかったが依頼原稿として、文献紹介および男女共同参画社会に関連した市民向け雑誌への記事掲載などを行った。令和2年度は、「末子中学生以上の共働き家族と妻の就業、ワーク・ライフ・バランス」に関する夫と妻へインターネット調査を計画し、準備を進めていたが令和4年度に再延期することにした。研究成果の発表として、2回の国内学会での発表は計画通りに実施した。2つの学会大会ともオンライン開催となったが、80名を超す院生・研究者に発表を聞いていただき有意義であった。また、関連する調査として6名の4年制大学卒の女性を対象とした「高学歴女性のウェルビーイング」に関するインタビュー調査を行った。調査結果は、『東京女子大学女性学研究所年報』No.31(2021)に掲載された。 令和3年度は計画通り、単著図書の発行を行った。国内・国際学会での発表を計画していたが、これに代えて依頼原稿の執筆を行った。また、二次データ分析により令和4年度に実施するインターネット調査にも関連する夫婦関係の勢力関係と家計分担について研究を進め、論文を投稿し、掲載が決定している。以上のようにコロナ禍によりインターネット調査の再延期となったものの調査の準備および研究成果の発信等の実施状況に基づき、令和3年度はおおむね計画通りに進捗したと評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、令和4年度には次の調査研究を計画している。方策として、はじめに「末子中学生以上の共働き家族と妻の就業」に関するインターネット調査を実施する。現在は質問紙の内容を精査しているが、末子中学生以上の子どもをもち、1都3県に居住する共働きの夫と妻を対象に行う計画である。具体的には、インターネット調査の準備、実施とデータクリーニング、記述的なデータ分析、多変量解析を行う。その分析結果をもとに、研究論文の執筆・投稿を計画している。研究論文では、先行研究をふまえ、夫婦間の勢力関係と家計分担について、ジェンダー階層理論(theory of gender stratification)(Blumberg & Coleman 1989)を援用する。妻が経済的資源を得ても,妻の勢力を減ずるような男性優位の社会および個人的なジェンダーイデオロギーが家事分担、意思決定にどのように関連するのか、日本と欧米との違いはどのような点であるのかを明らかにする。また質問紙調査では、申請当初に計画していた中学生以上の子どもの職業観についても項目を設ける予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に計画していたインターネット調査を令和4年度に延期したためです。令和4年度に実査をする準備を進めていますが、次年度使用額は主にインターネット調査の実施費用とします。
|