研究課題/領域番号 |
19K02363
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
井上 広子 東洋大学, 食環境科学部, 准教授 (60438190)
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研究分担者 |
桑野 稔子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (20213647)
鈴木 裕一 仙台青葉学院短期大学, 現代英語学科, 教授(移行) (50091707)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 児童 / 味覚感受性 / 食習慣 / 生活習慣 / 社会環境要因 |
研究実績の概要 |
近年、核家族化の進展、共働きの増加などの社会環境の変化や外食・調理済み食品の利用の増加など食生活のあり方が大きく変化しつつあり、子どもにおいても味覚感受性が低下していることが危惧される。また、健康・栄養格差の問題が我が国の社会的問題として注目されてきており、子どもにおいては、6人に1人が貧困であるとされる。 これらの背景を受け、本研究では、次世代を担う子どもとその保護者を対象に、味覚感受性と多角的な食・生活習慣の実態調査ならびに保護者の所得や就労形態などの社会環境要因の実態について調査し、その相互関係について解明することを目的に研究を遂行した。 初年度(2019年度)は、東洋大学における人を対象とする医学系研究倫理審査委員会の承認後、研究同意の得られた中山間地域に在住する小学5年生の児童とその保護者を対象者とした。調査内容として、塩味の味覚官能評価試験、食物摂取状況調査、食と健康に関する質問票(児童のみ実施)、血液生化学検査(児童のみ実施)を実施した。これまでに児童と保護者の官能評価試験結果と食・生活習慣との関連、食物摂取状況調査との関連について解析を行った。 その結果、児童と保護者の塩味識別、食塩感受性との関連については、有意な関連が認められ、親子で味覚感受性が関連していることが推察された。児童における食物摂取状況調査と塩味識別との関連については、正解群が不正解群に比較し、カリウムやビタミン類、食物繊維等の摂取量が有意に多い結果が得られた。食品群別摂取量においても正解群が不正解群に比較し、総野菜、果実類摂取量が多い傾向にあり、嗜好飲料類においては、摂取量が少ない傾向がみられた。また、親子ともに正解群の者は、親子ともに不正解群の者に比較し、総野菜、その他の野菜類の摂取量が有意に多い結果が得られた。 今後は、保護者の所得や生活習慣との関連についても解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
味覚官能評価試験については、対象者(児童・保護者)の負担、調査時間、調査者のマンパワー等に考慮し、共同研究者、協力者とも協議を重ね、塩味に絞って行うこととなったが、それ以外の調査項目についてはおおむね実施することができた。 対象者によってはすべての調査項目を実施することができない者もいたが、児童と保護者の味覚感受性、食物摂取状況調査との関連については解析を行うことができた。 現在、その他の関連についても解析を進行中であるが、初年度としてはおおむね順調に行うことができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2年目(2020年度)は、別の地域に居住する児童とその保護者も対象とし、対象者をさらに増やして実施していきたいと考えていたが、昨今の新型コロナウイルス感染拡大の影響で調査自体を実施することが極めて難しい状況にある。味覚官能評価試験や唾液中アミラーゼ測定は、密接・密着する調査であり、対象者や調査者の安全性を考慮すると実施は困難であると考える。 また、緊急事態宣言やテレワーク、社会的活動の自粛に伴い、保護者の所得にも影響が出ており、通常の食物摂取状況や保護者の所得状況と異なる可能性が多大にある。昨年度と同様の質問紙調査も実施することが可能か未定である。ただし、対象者の帰属集団、共同研究者、協力者とも協議を行い、可能な限り、調査を実施していけるよう努めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度(2019年度)の研究調査は、官能評価試験で使用する試験水の保管のために、冷蔵庫を購入したが、その他高額な備品・物品類は購入せずに研究室内に既存の物品で対応できた。2年目(2020年度)は、調査に持ち運びできるノートパソコンを購入する予定である。また、2019年度の対象者は、謝礼を必要としなかったが、新規エリアの対象者においては、謝礼が発生する可能性がある。
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