研究課題/領域番号 |
19K02364
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研究機関 | 名古屋学芸大学 |
研究代表者 |
山田 千佳子 名古屋学芸大学, 管理栄養学部, 准教授 (30351216)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 小麦アレルギー / ω-5グリアジン |
研究実績の概要 |
2021年度は、これまでに作製した抗ω-5グリアジンモノクローナル抗体を用いて、in vivoでのω-5グリアジンの消化性・吸収性の解析について検討した。B10.Aマウスにω-5グリアジンまたはコントロールとして卵アレルゲンであるオボアルブミンをマウス一匹当たり20mg経口投与し、30分後に採血してその血清を試料とした。また、消化管を摘出し、胃・小腸・盲腸・大腸に分割した後、各組織をPBSで洗浄することで内容物を回収した。消化管内容物中の各アレルゲンはイムノブロットで検出し、血清中の各アレルゲンは阻害ELISAで定量するとともにイムノブロットで存在状態を確認した。 その結果、消化性については、OVA投与群で胃から小腸にかけて未分解または分解断片のバンドが検出された。一方ω-5グリアジン投与群では、胃から未分解物が検出されたが、それ以降ではほとんど検出されなかった。この結果から、ω-5グリアジンは投与後30分では大部分が胃に残存しており、OVAと比較して消化されにくいと考えられた。また、吸収性の解析では、OVAは平均206.165ng/ml血中への移行が確認されたが、ω-5グリアジンは検出限界以下となり、イムノブロットにおいても検出されなかった。 このような結果となった原因として、ω-5グリアジン検出系の感度の悪さが関係していると考えられる。阻害ELISAによるOVAの検出系では、定量可能範囲が1~100ng/mlであったのに対して、ω-5グリアジンの定量可能範囲は1~100μg/mLであった。またイムノブロットの結果から、マウス由来の血清成分に反応していることが確認された。したがって、阻害ELISAの検出感度の悪さは、前処理段階でこのマウス由来血清成分と抗体が反応したためと考えられた。この問題を解決し、検出系の精度を高めることが課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでに作製した抗ω-5グリアジン抗体を用いてin vivoにおけるω-5グリアジンの動態を解析する系の構築を試みたが、この抗体がマウス由来の血清成分に反応していることが確認され、これが原因と考えられる測定感度の低下が課題となった。この問題の解決が必要なため、当初の研究計画から遅れが生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、マウス血清中からのω-5グリアジン検出系の改善を図るため、新たに抗体を作製し、サンドイッチELISAによる検出系の確立を検討する。検出系を確立したうえで、再度マウスにω-5グリアジンを経口投与し、消化性及び吸収性について解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに作製した抗ω-5グリアジン抗体を用いてin vivoにおけるω-5グリアジンの動態を解析する系の構築を試みたが、感度が低いという問題が生じた。この問題の解決が必要なため、当初の研究計画から遅れが生じてしまった。次年度は、問題解決のために新たに外注による抗体作製を行い、サンドイッチELISAによる検出系の確立を検討する。したがって、助成金は抗体作製の外注費および動物実験の費用に充てる予定である。
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