最終年度となった2022年度は、マウスにリコンビナントω-5グリアジンを経口投与し、60分後の消化性を解析した。その結果、胃及び小腸からω-5グリアジンとその消化物を検出した。しかし、本研究で作製した抗ω-5グリアジンモノクローナル抗体は、ω-5グリアジンを検出できるもののその他のグリアジンやマウス由来の血清成分に反応していることが確認された。この問題を解決するために、ω-5グリアジンの新たな検出方法としてAcid-PAGEの利用を検討した。SDS-PAGEのゲル組成を改変して行うAcid-PAGEを用いて小麦粉中のグリアジンの分離・検出を検討した結果、小麦粉中のω-5グリアジンとα/β-およびγ-グリアジンの分離・検出が可能となった。 本研究では、加工方法の違いによる小麦アレルゲンの変化がアレルギー症状の誘発に及ぼす影響を明らかにし、患者が安全に摂取できる小麦加工方法を提案することを目的とした。リコンビナントω-5グリアジンを用いてモノクローナル抗体を作製し、異なる条件で作製した小麦生地を純水で茹でたときの溶出アレルゲンを検出した。その結果、茹で時間が長いほど、茹で時の生地の表面積が大きいほどアレルゲン溶出量が増加した。さらに生地のpHを変化させると、アレルゲンの溶出量は酸添加生地>アルカリ添加生地>水添加生地となった。しかし、生地からのアレルゲン溶出量はわずかであり、ゆで生地からはアレルゲンが検出された。また、in vivoでのω-5グリアジンの消化・吸収性を解析した結果、ω-5グリアジンは投与後30分では大部分が胃に残存しており、60分では胃及び小腸から消化物が検出された。今後、Acid-PAGEと抗ω-5グリアジンモノクローナル抗体を組み合わせることで、マウス血清中のω-5グリアジン検出が可能になるのではないかと考えている。
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