研究課題/領域番号 |
19K02365
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
明神 千穂 近畿大学, 農学部, 講師 (90529752)
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研究分担者 |
川西 正子 近畿大学, 農学部, 准教授 (20221038)
郡 俊之 甲南女子大学, 医療栄養学部, 准教授 (80440999)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 災害食 / 保温パッククッキング / パッククッキング / 保温調理 / ユニバーサルデザインフード / 野菜 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、今年度も災害時に咀嚼・嚥下困難な高齢者に対して利用可能な保温パッククッキング法の手法の確立を目的として実施した。今年度は根菜類(ダイコン、ニンジン)と一部の葉菜類(コマツナ)について、保温パッククッキング法の調理条件の検討を行った。 1㎝角にカットした根菜類の物性測定を行ったところ、いずれもユニバーサルデザインフード区分2を上回った。一方保温前にそれぞれ予備加熱を行ったところ、ユニバーサルデザインフード区分2を下回る結果が得られた。根菜類を用いて保温パッククッキング法で調理する際は、保温前の予備加熱時間や切り方など、野菜ごとに検討が必要であることが示唆された。調理後におけるDPPHラジカル捕捉活性、総ポリフェノール量、アスコルビン酸量、糖度の増減は、野菜の種類によってそれぞれ異なる傾向がみられたものの大きな減少はなく、また連続加熱で行うパッククッキング法と比較しても、いずれも有意差はみられず調理後もある一定量は保持されていた。本調理法はポリ袋内での加熱調理のため、抗酸化性やうまみ等の流出が少ないことから、災害時の栄養成分の摂取においては有用な調理法であると考えれる。 今年度は災害時の食や栄養に関する学術論文の系統的レビューも行った。「災害時・食」を検索ワードとしたデータベース検索により論文を抽出し、表題及び抄録の精査、本文の精読を行った。さらに設定した採択基準に従い採択された論文を整理・分析し、国内の災害と栄養に関する研究の状況について調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の結果をもとに保温パッククッキング法を用いて野菜の調理条件法の検討を行ったが、本年度は根菜類とイモ類の実験のみとなり多種の葉菜類の分析には至らなかった。また被災経験のある自治体の行政栄養士に対して、災害時の要配慮者への食に関する対応や課題についてアンケートおよび訪問インタビュー調査を行う予定だったが、前年度同様新型コロナの感染拡大がおさまらなかったこと、また次年度も見通しが立たないことから、本計画の実施を断念した。代替として国内の災害時における栄養・食に関する調査研究が示された学術論文の系統的レビューを行った。
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今後の研究の推進方策 |
保温パッククッキング法を用いた調理法の有効性は一部の野菜には得られたが、野菜の種類、部位さらには収穫時期によって変化することから、野菜ごとの傾向を得るため分析する野菜の種類を増やし、基礎的なデータの蓄積を行う。また保温パッククッキング法に適する野菜の下処理法、さらに予備加熱時間や保温時間の検討も同時に進めていく。これまでの研究結果を用いて、災害支援物資や缶詰、レトルト商品などの備蓄食品と組み合わせたメニュー、レシピを考案し、嚥下・咀嚼機能に問題のある要配慮者のための、科学的データに裏付けられた3日間の献立を考案する。それらをまとめたリーフレット作成を行い普及につとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の実験においては新型コロナ感染拡大の影響で、学会発表や国内外の出張等ができず旅費の支出が生じなかった。 次年度は最終年度にあたるため、不足のデータを集積するために実験を継続し、またこれまでの結果を用いてまとめたリーフレット等を作成し各都道府県や栄養士会に送付予定であり。さらに普及のためにホームページの作成を予定している。今年度分と合わせて有効利用する予定である。
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