研究課題/領域番号 |
19K02369
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
菅野 美和子 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 臨床研究企画運営部, 研究員 (90795189)
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研究分担者 |
坂根 直樹 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 臨床研究企画運営部, 研究室長 (40335443)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 妊娠前 / 妊娠 / 産後 / 個別化栄養 |
研究実績の概要 |
妊娠前、妊娠中、産後の食生活を支援する個別化された栄養プログラムを開発し、その効果を検証するのが本研究の目的である。 本年度は、妊婦の食事データベースを元に妊娠初期、中期、後期の食事調査と貧血、妊娠糖尿病の発症について検討を加えた。妊婦における貧血の診断は、ヘモグロビン濃度(Hb)が11g/dL未満とした。さらに、ヘモグロビ ン濃度が10.0~10.9g/dLは軽度、7.0~9.9g/dLは中等度、7.0g/dL未満は重症と判定した。妊娠初期、中期、後期にむかって貧血の割合は有意に増加した。総摂取エネルギー、3大栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物)に加えて、貧血と関わる葉酸、ビタミンB群(B6 、B12)、カルシウム、ビタミンD、マグネシウム、鉄、亜鉛について貧血の有無、妊娠糖尿病の有無で比較した。 また、もともと肝臓で産生される抗菌ペプチドとして発見され、現在では鉄代謝に中心的な役割を果たしているヘプシジン(hepcidin)に注目し、ヘモグロビン濃度やMCV(赤血球1個当たりの平均的な大きさ)・MCH(平均ヘモグロビン量)・MCHC(平均ヘモグロビン濃度)の妊娠初期→中期→後期における変化にヘプシジン関わるSNPが一部関係していることを明らかにした。これらの知見は個別化栄養プログラムの開発に役立つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
京都医療センター倫理委員会の承認を経て、妊娠前の女性の食事データベースを活用することが十分にできたから。妊娠初期、中期、後期の食事のデータベースを作成して、貧血と妊娠糖尿病発症に関わる食事因子や個別化のためのSNPも発見することができた。 また、鉄代謝に関わるヘプシジンの測定も可能となった。既に、妊娠前からの野菜摂取が妊娠アウトカムと関連することを報告しているが、野菜摂取を促す利点と阻害因子を測定する尺度の開発にも成功することができた。さらに、コロナ禍において健康的な食事の変化ステージ(前熟考期、熟考期、準備期、実行期、維持期)を進めるために電話支援が有効であることもわかったから。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、妊娠中の食事のデータベースを用いて、妊娠アウトカムと食事やSNPの測定を行い、個別化栄養プログラム開発のための調査を継続して行う。そして、妊娠糖尿病に対しては、食後血糖に注目した個別化された栄養プログラムを開発に着手する。その方法として、管理栄養士、医師、保健師、助産師、健康運動指導士などによるワークショップを行い、個別化のアルゴリズムを作成する(年齢別、体重別、患者の嗜好別、経済状態など)。妊娠の経過だけでなく、患者の興味やライフスタイルに合わせたプログラムの開発を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はCOVIDの為、旅費等の移動費の支出がなかったため、次年度に繰越こととなった。
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