研究課題
神麹は,微生物発酵を経て作られる薬の麹であり,現在日本において医療用漢方製剤に含まれている生薬である.しかしながら神麹は薬効成分が不明であるため,作用の根幹を担う薬効成分の同定が求められている.昨年度までは,培養細胞とマウスの機能解析を用いて神麹の薬効を調査してきたが,今年度は神麹の微生物発酵による含有成分の変化や添加植物に由来する薬効成分を調べることで、神麹の薬効成分を見出すこととした.まず,市場に流通する神麹に存在しいていたAspergillus 属糸状菌及びRhizopus 属糸状菌を用いて,小麦,ヤナギタデ,オナモミ,クソニンジン,杏仁,赤小豆から神麹を製造した.発酵前後の成分を分析した結果,消化酵素 (alpha-アミラーゼ,プロテアーゼ,リパーゼ) 活性が増加すると共に,葉酸やグルコシルセラミド (プレバイオティクス効果)が増加することが分かった.さらに2, 3-ブタンジオールやアセトイン,グアイアコール等の揮発性成分が発酵により生成した.一方,小麦に含まれるフェルラ酸 (抗炎症作用) や,植物に含まれる精油成分 (健胃作用) については発酵により増加は見られず,むしろ減少傾向が見られた.さらにAspergillus もしくはRhizopusといった微生物種の違いにより,酵素活性や葉酸含量,揮発性成分組成に違いが見られ,発酵に寄与する微生物が神麹の品質に大きく影響することが示された.続いて,神麹の製造過程における特徴の一つである植物添加に着目し,植物添加が神麹の品質に与える影響を調べた.その結果,植物の添加により酵素活性等の上昇は見られなかったが,Dihydroactinidiolide等のセスキテルペン類が付与されることが明らかになった.本研究により神麹には複数の有用成分が含まれることが明らかとなり,これらの成分が神麹の品質管理の指標となる可能性が示された.
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Traditional and Kampo medicines
巻: 9 ページ: 10-17
10.1002/tkm2.1303