研究実績の概要 |
仙台地方の染色業は、明治期から昭和40年代にかけて当時の重要産業として栄え、いくつかの特徴的な型染めがあった。本研究ではこれらを後世に伝えるために、型紙調査と、型紙文様の再生を目途としたデジタルアーカイブ研究を行った。 明治期から生産された「常盤紺形染」に用いられた型紙(常盤紺型)の赤外線スキャナを用いたデジタル画像保存を行い、画像分析した結果、通常肉眼では見ることのできない文字情報を31%の型紙から得ることができた。さらに、材料に反故紙が用いられた型紙が63%あり、その記載内容からも年代・地名の情報が得られた。これらの情報を精査し、19%の型紙は仙台地方で常盤紺形染の製造が始まった明治23年以降に作られ、会津型14%、伊勢型12%であることが分かった。 また、デジタル画像データを活用し、中型カッティングプロッターを用いて常盤紺型文様の再生を試みた。型紙に残された刃跡をトレースした切断線を作成し、常盤紺型の代表的な文様を複製した。 一方で、コロナ禍および東北地方で頻発した大地震の影響により、当初予定していた公的機関での調査が行えなかったため、同じく仙台地方の重要染色品であった「印染」に用いられた型紙まで研究対象を広げ、民間所蔵の帆前掛け型紙1,506枚の基礎的な調査とデジタル画像保存を行った。販路を示す文様を分類した結果、北海道と東北地方の顧客とで約75%を占めたが、関東地方から九州地方まで、仙台地方の印染染物が日本全国で使用されていたことも示された。 これらの研究成果の一部を『仙台型染資料集』の続刊に掲載し、令和3年度には第16巻として印刷製本するとともに、仙台地方の染色を伝承するための教育プログラム研究も行った。手彫りやカッティングプロッターにより作成した型紙を活用する方法と、インクジェット昇華転写捺染を組み込んだ実習教材について検討し、大学生を対象に試行した。
|