研究課題/領域番号 |
19K02379
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
榎本 一郎 日本女子大学, 家政学部, 教授 (10462970)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 表面改質 / 高強度繊維 / フッ素ガス処理 / スルホン化 |
研究実績の概要 |
当初の予定通り、フッ素ガス処理により高強度繊維である超高分子量ポリエチレン繊維の改質を行った。これまで行ってきた処理条件より強めに設定し、処理時間(ガスの暴露時間)と亜硫酸ガスの導入量を増やして繊維表面にスルホン基を固定した。しかし、ある程度まではスルホン基の固定量が増加するもの、一定量以上に処理条件を強くしても官能基(スルホン基)の増加は見られず、カチオン染料による染色濃度も同様の傾向であった。この主な要因は内部への改質が十分ではなく、極最表面のみの改質であると考えている。このため、事前に繊維内部まで油性染料で着色し、その後ガス処理によって表面を改質して別の染料(カチオン染料)で染色する方法を試みている。ガス処理は外部(協力者)に委託しているため、処理待ちである。 改質、染色済みのニット生地を衣料用途として利用するため、カチオン系の樹脂でのコーティングを試みた。この水溶性樹脂の濃度を0.1%~5%程度の水溶液にしてディピングによりニット生地に塗布し、乾燥後、100℃以下で硬化させた。繰り返し洗濯によりコーティングしたニット生地の耐久性を調べたところ、5回~10回程度の洗濯で塗布した樹脂が脱離していることが明らかとなった。繊維上への樹脂の耐久性はFT-IRのATR法で調べた。樹脂が離脱した理由として、染色同様、改質層が極表面のみであるため樹脂が最表面層と共に離脱していると考える。X線光電子分光分析による解析では、改質層が数十ナノメートル程度であることを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概ね順調に進んでいるが、フッ素ガス処理を行えるところが限られており、相手先の事情により予定通り進まないことがある。またこれまで処理条件をいろいろ変えて行ってきたが、繊維内部までの改質にはある程度の限界がある。 別途、放射線処理も有力な処理方法であるため、電子線処理、ガンマ線処理を行う計画でいるが、こちらも外部委託であるため、順番待ちになっている。
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今後の研究の推進方策 |
二つの処理方法を考えている。一つは油性染料で超高分子量ポリエチレン繊維を染色して(このままでは染色堅ろう度が良くない)、最表面をフッ素ガス処理によりスルホン化してカチオン染料で染色する方法である。 もう一つの方法は、放射線グラフト重合による方法である。放射線(電子線およびガンマ線)で繊維の内部まで改質し、各種薬剤でグラフト鎖を形成させる方法である。
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次年度使用額が生じた理由 |
外部委託で行おうとしていた放射線処理が順番待ちとなって使用できなかったため。次年度に行う予定である。
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