高強力繊維として、110dtexの超高分子量ポリエチレン繊維を使用した。この繊維を10㎝×20㎝程度のニット生地にして染色加工用の試験布を準備した。染色および加工の前処理として、試験布をフッ素ガス処理により水酸基を付与する表面処理を行った。処理により親水化した試験布に10%単官能アクリル樹脂水溶液を塗布し、乾燥後、電子線照射により樹脂を硬化させた。電子線硬化は、加速電圧200KeV、25kGy、窒素雰囲気中で行った。処理後、1%カチオン染料溶液に浸し、90℃で30分間染色した。染色後は、水洗、湯洗、ソーピングを行い、再度水洗して試験用の染色生地を準備した。 染色布に対して、洗濯堅ろう度試験、耐光堅ろう度試験を行った結果、これまでの結果より半級から1級程度向上したが、変退色 3級、汚染(毛)3-4級(洗濯)、変退色 3級(耐光)と、目標とした4級以上は得られなかった。別途、単官能アクリル樹脂水溶液を塗布しないで前処理のみで染色した布に5%のカチオン系樹脂を塗布した生地では、変退色 4級(耐光)を達成できた。生地の風合いに関しては、さらなる検討が必要になる。 一方、ニット生地にした試験布で接触冷感性(q-max)を計測したところ、約0.200W/cm2となった。JIS L 1927では、q-maxが0.100以上あれば接触冷感性があるとされているが、実感では0.2W/cm2が求められている。この数値は、未処理でも染色加工したものでもほぼ同じ数値であった。 一部の染色堅ろう度試験で目標に達していない項目は、樹脂の組み合わせ及び併用を試みて検討する必要がある。
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