研究課題/領域番号 |
19K02382
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研究機関 | 甲南女子大学 |
研究代表者 |
小野寺 美和 甲南女子大学, 人間科学部, 講師 (90523762)
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研究分担者 |
谷 明日香 四天王寺大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (30413446)
竹本 由美子 武庫川女子大学, 生活環境学部, 講師 (90581926)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 再帰性反射 / 蓄光材 / 視認性 / SD法 / 薄暮 / 高視認性 |
研究実績の概要 |
子供たちを交通事故から守るJATRAS団体が設定した基準「児童及び自転車通学者向け高視認性安全服」に沿って作成されたJAVISAの児童向け高視認性安全ベスト(以下、ピカピカベストと記す)を参考に、蓄光素材のテープや糸も取り入れたデザイン性もあり普段着に馴染みのある子供服(以下、新ピカピカベストと記す)の提案を試みた。実験で収集した現在市販されている胴部だけを覆うベストは高視認性安全服<JIS T 8127>の3種だが主に大人用であり子供用は皆無であった。子供用の服は限定された茨城県水戸市と地元企業が協業して無償で配布している服や、今回JAVISAより提供されたピカピカベストしかない。このベストの素材は、不織布(ポリエステル55%、レーヨン45%)であり、アイロンは当て布をしたら可能であるが洗濯は不可である。本研究では大人用3種の市販ベストと、ピカピカベスト1種の計4種を用いて、女子大学生109名を対象に19項目の質問(交通安全対策の意識調査に関する8項目と、ピカピカベストに関する安全の有用性とデザインや価格の11項目)を通して安全に配慮した子供服のデザインを検討した。「安全ベストの購入に考慮することは何か」では、79人(72.48%)がデザイン性(かわいい、かっこいいなど)と回答し、次いで、価格が70人(64.22%)、家庭洗濯が可能であるが50人(45.87%)であった。「ピカピカベストがどのようなデザインであれば着用してみたいか(複数回答)」では、「普段の服に合わせやすい」が最も多く、次いで「シンプルやおしゃれ」であった。最後に「ベストの何処に反射素材と蓄光素材を付けるか」では、36人(33.03%)が左腹部上であり、次いで右腹部上の35人(32.11%)、右腹部中央の33人(30.28%)左腹部中央の32人(29.36%)、右胸周辺の29人(26.61%)であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
薄暮夜間における歩行者や自転車利用者の交通事故防止を図るために、再帰反射素材の被覆着用を推奨する活動が見受けられるがデザイン性、着心地などの問題点から利用拡大には至っていない。 そこで今回の研究では「JIS Z9107」に相当する蓄光布を用いた衣服設計を企画し、JIS T8127「高視認性安全服」を参考に,蓄光素材のテープや糸も取り入れたデザイン性もあり普段着に馴染みのある服の着用を普及促進させるために、JAVISAより提供されたベストを用いて検討を試みた。 当初の予定では、ベストに関する19項目の質問を基に、実物大の①再帰性反射材のみを用いた服と②蓄光材のみを用いた服、更には③再帰性反射と蓄光材の両方を用いて作製した服の各々について、身体的、生理的な快適さ(着心地にかかわる性能、被服構造・着装方法、衣服内気候)を「服装により生起する感情状態尺度」を用いてSD法主観評価測定値から検討する予定であったが、新型コロナウィルスの影響で被験者実験を行うことが出来なかった。 また、人体のサイズを自由に変形できるバーチャルファッションコーディネートソフトを用いて、人体体表の区分と方位に従ってどの部分に蓄光布を取り入れたいかについて、被験者を用いたSD法主観評価測定値から検討することも出来なかった。 共同研究(四天王寺短期大学部)の専門家に当該分野が該当しており、バックアップや情報収集、資料収集や被験者実験に関する協力を計画していたが、こちらも上記同様に実験を行うことが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、現在遅れている①「JIS Z9107」に相当する蓄光布を用いた衣服設計研究をJIS T8127「高視認性安全服」の企画と参考に行う。 次に②蓄光布の性質や性能を客観的な測定値を用いて導き出すKES計測システムを用いて、布の力学的性質(引張り・曲げ・せん断・圧縮変形に対する性質)と布の表面特性(表面摩擦・表面粗さ・布の厚さ)を布の物理量から検討する。 さらに③JIS T8127「高視認性安全服」の規格を参考に蓄光布を染色した場合のりん光輝度に及ぼす影響について、蓄光糸を一本ずつ染色する「先染」と、蓄光布(織物や編物のような反物)を染色する「後染」に着目し、各々含まれる染料の含有量から、りん光輝度測定値に及ぼす影響を、洗濯試験(JIS L 1930 A4N・5回繰返しを全ての試料同浴で実施)及び。摩耗試験(JIS L 1096 箇条8.19.5E法の「マーチンデール法」)とし、染色の有無や試験前後のりん光輝度測定と表面状態を観察した結果から比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に行う予定であった企業との試作品製作の計画と打合せの全ての会議が、新型コロナウィルス感染拡大に伴う影響でオンラインになり、旅費の予算を使い切ることが出来なかった。 次年度は、試作品製作や蓄光糸の企業との打ち合わせを行うための通信設備の強化と、防災関連のセミナーへ提供する資料作成、さらに、学術論文(日本家政学会誌、繊維製品消費科学会誌、繊維機械学会誌、日本衣服学会誌、日本感性工学会誌など)への投稿や学会(日本家政学会、繊維製品消費科学会、繊維機械学会、日本衣服学会、日本感性工学会)での積極的な口頭発表を行うと共に、本学の広報室や一般社団法人 日本高視認性安全服研究所/JAVISAなどを通じて各新聞報道などのマスメディアを使用し、社会・国民に広く発信するなどに助成金を用いていく予定である。
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