【目的】早期発見に繋げた交通事故の減少をめざす衣服設計として,高視認性素材である蓄光材と再帰性反射材に着目し,これらが配置されたマネキンの人体体表区分を視認した時のヒトの心理反応について主観評価実験を試みた. 【方法】KITマネキン社製の可動関節マネキン「B(バスト)94㎝,W(ウエスト)79㎝~83㎝,H(ヒップ)93㎝,肩幅43㎝,T(身長)180㎝)」の体表に再帰性反射素材と蓄光材を配置した.暗所曝露時に撮影した画像20枚を提示した.被験者に及ぼす印象には,計35語の形容詞対(「服装により生起する感情状態尺度」3)の肯定的感情状態4項目から各項目1語を,否定的感情状態3項目から各項目1語を各々抽出した7語〈うきうきする/イライラする,爽快な/憂鬱な,落ち着いた/落ち着かない,上品な/下品な,くつろいだ/緊張した,安心する/不安な,安らいだ/動揺した〉と,好感や視認性を考慮した28語)を用いたSD法7段階尺度の主観評価実験を行った.本研究には,20代の女子大学生20名が参加した.測定時間は,概日リズムおよび性周期を考慮した低体温期の同一時間帯(12:30-15:30)に設定し,被験者は食事を実験実施前2時間以上控えた. 【結果】再帰性反射素材と蓄光材を比較すると,得られた主観評価得点は同じ傾向であった.蓄光材を配置した画像の方が評価項目にバラつきがみられた.蓄光材は配置する部位の組み合わせがヒトの心理反応に影響を及ぼすことが分かった.また,再帰性反射材画像よりも蓄光材画像を提示した場合,「大胆な」「濃い」「重厚な」「涼しそうな」「不調和な」「危険な」「閉鎖的な」「いらいらする」「動揺した」「すっきりした」の各々の項目で評価得点が高い傾向が見受けられた.
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