研究課題/領域番号 |
19K02385
|
研究機関 | 兵庫大学 |
研究代表者 |
細川 敬三 兵庫大学, 健康科学部, 教授 (30311393)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | グルテンフリー / バナナ / 追熟 |
研究実績の概要 |
これまで追熟バナナに含まれるグルテン代替成分の可能性として分子量6kD以上の成分が、一方、6kD以下の成分に乾燥酵母の発酵促進効果がある可能性を見出している。 今年度は、20℃で2週間処理した追熟バナナ(RB)から分子量6kD以下の水溶性画分(F1)、分子量6kD以上の水溶性画分(F2)、水不溶性画分(F3)の3画分を分離し、それぞれを単独および各画分を組み合わせて製パン試験を実施した。その評価は、焼成したパンの比容積(cm3/g)を測定することにより実施した。 3画分(F1~3)の単独使用での比容積は、F1(4.93 cm3/g)、F2(1.68 cm3/g)、F3(1.65 cm3/g)であった。F1ではある程度の生地の膨化が観察されたが、F2とF3では生地の膨化が観察されなかった。このことから、F1には、発酵に必要な炭素源(低分子の糖類)が含まれているが、F2とF3には発酵に必要な炭素源(低分子の糖類)が含まれていないことが推定された。そこで、F1とF2、F1とF3及びF2とF3を組み合わせた製パン試験を実施した。その比容積は、F1とF2(5.36 cm3/g)、F1とF3(4.79 cm3/g)とF2とF3(1.97 cm3/g)であった。F1とF2の組み合わせが最も優れており、RBでの比容積5.26 cm3/gとほぼ同等の膨化を示した。これらのことから、F2画分にグルテン代替成分が含まれている可能性が高いと推定された。また、F1、F2、F3の3画分を組み合わせた場合の比容積は、5.15 cm3/gとRBを用いた場合とほぼ同程度であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、追熟バナナに含まれる製パン性に寄与する成分の特定を目指して研究を進めた。分子量6kD以下の画分には、発酵に必要な糖類、分子量6kD以上の水溶性画分にはグルテンの代替成分のが含まれていることが確認できたが、その成分の特定まで進めることができなかった。また、コロナ下のため他施設で実施予定であったSEMによる観察ができなくなり、発酵中の生地の状態が観察することができなかった。このため、分子量のサイズによる分画分での製パン性の比較検討に留まった。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、追熟バナナのグルテン代替成分として水溶性高分子画分(分子量6kD以上)に含まれている成分としてペクチンを推定している。今後は、そのペクチンの含有量、種類(水溶性、キレート剤可溶性、酸可溶性、アルカリ可溶性など)について研究を進めていきたい。また、主たるペクチンを分離し、その詳細な構造について検討するとともに製パン特性との関係を比容積による評価とともに、生地の発酵中に起きている現象をSEMによる観察で明らかにし、追熟バナナのグルテン代替成分の働きを明らかにしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度、外部施設でSEMの測定を実施する予定であったが、コロナの状況下で外部施設の利用ができなく出張旅費等の支出がなかったため、全体的に研究の進捗がやや遅れぎみとなり経費の使用額が少なくなった。 次年度は、所属先が変更となり研究設備に不足するものがあるため、備品の購入(実体顕微鏡観察時に使用するカメラ、製パン時に使用するガスオーブン)にその一部を使用したい。
|