研究課題
これまでグルテンフリーパンの製造のため、グルテンの代替として追熟バナナの利用と関与する要因について研究を実施してきた。この中で、追熟バナナの関与成分としてパン酵母の発酵原料となる低分子の糖類(グルコース、フルクトース、スクロース)およびグルテンの代替としてペクチン(主に、キレート可溶性ペクチン)の重要性を報告してきた。今年度は、グルテンの代替成分としてのペクチンの特性について検討するため、市販ペクチン3種類(高メトキシルペクチン(シトラスペクチン、リンゴペクチン)、低メトキシルペクチン)を用いて製パン性について比容積を指標として調査し、追熟バナナに含まれるペクチンの特性を3種類のペクチンと比較した。これら3種類のペクチンでは、最適添加量はシトラスペクチンで1%、リンゴペクチンで5%、低メトキシルペクチンで6%で、その最適加水量はそれぞれ70、80、70Bakers'%であった。3者の中では、シトラスペクチンが最も少量でグルテンの代替となり得た。一方、製パン性に最適な追熟期間が2週間のバナナに含まれるペクチンは、3.28%(対乾物)で、製パン時にはペクチンとして0.328%を添加しており、シトラスペクチンより非常に少ない添加量でグルテンの代替としての役割をはたしていた。この結果からペクチンがグルテンの代替として利用できる可能性を示すことができるとともに、その種類によってグルテンの代替効果が異なることが明らかとなった。また、バナナに含まれるペクチンはかなり少ない量でグルテンの代替になりうることが明らかになった。
4: 遅れている
今年度は、所属が移動したため移動先の研究施設に不足があったため、研究の遂行がかなり遅れた。
小麦澱粉を用いたグルテンフリーパンの製造に関与する追熟バナナの要因としてペクチンが重要であることが明らかになったが、小麦澱粉と追熟バナナに含まれるペクチンの両者の関係が明らかにされていない。従って、今後は、小麦澱粉を構成する大粒子澱粉および小粒子澱粉と追熟バナナに含まれるペクチンがどのような相互作用により、生地中に気体を保持して製パン性が向上しているのかを明らかにしたい。このため、小麦澱粉から大粒子と小粒子澱粉を分離し、両者を任意の割合で混合したものに追熟バナナのペクチンを加えた生地における気体の保持状況をSEMにより観察するとともに、製パンによる比容積の測定から両者の役割を明らかにしたい。
今年度は、所属が移動したため移動先の研究施設に不足があったため、研究の遂行がかなり遅れた。その結果、使用予定の物品類の購入を行わなかったので、次年度に使用予定である。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
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兵庫大学論集
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