研究課題/領域番号 |
19K02388
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研究機関 | 福岡県工業技術センター |
研究代表者 |
堂ノ脇 靖已 福岡県工業技術センター, その他部局等, 専門研究員 (80416528)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 繊維加工 / ドライプロセス / プラズマ |
研究実績の概要 |
「ドライプロセスを用いて両方の高分子材料を改質することにより固着・接着を制御できる」成果に着眼し、繊維加工浴中における化学繊維‐蛋白質相互作用においても最適なドライプロセス処理があり、これらの条件によって相互作用が制御できると考えた。そこで、この仮説の実証と、無添加で相互作用制御を行い、効率の良い架橋反応を行う低環境負荷な繊維加工技術の開発を目的として3つのサブテーマのもと、実施している。2020年度に実施したサブテーマ1および2の成果を以下に記す。 「サブテーマ1.ドライプロセスによる蛋白質の改質と浴中の分散・拡散制御」 コラーゲン粉体の改質は、標準空気、窒素に加えて30%水素/窒素ガスの3種類を用いたプラズマ処理(ドライプロセス)、および水銀ランプを用いたウェットプロセスで行った。各処理による粒子径、ゼータ電位は水銀ランプで最も大きく変化し、それぞれ430から173nm、+0.7から-5.1mVにシフトした。 「サブテーマ2.ドライプロセスによる化学繊維‐蛋白質の浴中相互作用制御」 コラーゲン定量方法を検討し、コラーゲン特有のヒドロキシプロリン呈色反応を利用する方法を確立した。この方法を用いて、標準空気、窒素、30%水素/窒素ガスで改質したポリプロピレンと未処理コラーゲンの固着量(μg/g-fiber)を評価した。この結果、標準空気ガスが最も固着量が向上し、1%owfコラーゲン処理で0.1μg/g-fiber(固着率0.05%)が289μg/g-fiber(固着率2.9%)となった。一方、水銀ランプ処理したコラーゲンでは40μg/g-fiberであり、繊維とコラーゲンのアニオン性斥力によるものと考察された。このことから、コラーゲンのカチオン化が達成できれば更なる固着量の向上が期待できると考えられる。 「サブテーマ3.相互作用制御による堅牢性の調査」実施はなし。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
繊維に加工したコラーゲンの定量方法を確立し、現状、繊維へのコラーゲン(蛋白質)固着率が0.05%と低いことが明らかとなった。また、プラズマ処理による繊維の改質によって固着量および固着率を向上できることを明らかとした。定量方法については令和3年度に紙面発表を予定している。 一方、繊維およびコラーゲンのカチオン化は、今年度から窒素に加えて30%水素/窒素ガスでのプラズマ処理も検討したが、現在のところ表面電位との相関がとれていない。今後もカチオン化について検討を行い、繊維-蛋白質の相互作用向上を図る。
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今後の研究の推進方策 |
今後とも計画通り実施する予定である。各サブテーマについては以下のように実施する。 「サブテーマ1.ドライプロセスによる蛋白質の改質と浴中の分散・拡散制御」 引き続きコラーゲン粉体のカチオン化処理条件を検討する。具体的には今まで行っている水素/窒素ガスでのプラズマ処理に加えて、新たに繊維のカチオン化処理としてキトサンを介したコラーゲン固着も検討する予定である。この方法に適したコラーゲン処理条件も検討する。 「サブテーマ2.ドライプロセスによる化学繊維‐蛋白質の浴中相互作用制御」 ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレートについてもカチオン化処理条件を検討する。サブテーマ1と同様にプラズマ処理に加えて繊維のカチオン化処理としてキトサンを介した繊維‐キトサン-コラーゲンで固着量の向上を図り、最適な加工条件を見出す。 「サブテーマ3.相互作用制御による堅牢性の調査」 サブテーマ1、2で得られた条件で相互作用を行った後、架橋剤で化学繊維‐コラーゲンを化学結合させる。ここでもコラーゲン加工率を明らかとし、洗濯によるコラーゲン保持率で評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費および消耗品の使用実績が予定よりも少なかった。また装置の購入において複数の業者から見積合わせを行ったことから、次年度使用額が得られた。
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