研究課題/領域番号 |
19K02390
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
生越 達 茨城大学, 教育学研究科, 教授 (80241735)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 内なる公共性 / 内なる道徳性 / いじめ防止対策推進法 / 近代的自我と共同性 / 林竹二の授業 / よだかの星 / 金八先生 |
研究実績の概要 |
道徳教育及び公共性に関する先行研究(センの経済学等含む)を読み進めると同時に、ハイデガーやメルロポンティの現象学に学びながら「内なる公共性」、あるいは「技術と公共性との関連」について調べているところである。理論的な研究については2019年度中に目途をたてる計画であったが、とくに現象学の文献の整理についてはまだ十分とはいえず、引き続き研究を進めていく必要がある。したがって、理論的研究が十分に論文として具体的な成果として結実しているとは言えない。 本年度の成果については、二つの論文(「教職大学院で育む実践力(3)-授業といじめ予防の共通性-」(『茨城大学大学院教育学研究科教育実践高度化専攻(教職大学院)年報』第4号」、「近代的自我と共同性 金八先生は時代遅れか」(『茨城大学教育学部紀要(教育科学)第69号))において明らかにしている。両拙論は、現代教育のとっている政策が、むしろ内なる公共性、あるいは内なる道徳性が現れることを阻害しているのではないかということを、一つは教育政策、とくにいじめ防止対策推進法を例にして、もう一つは教育における近代化論を取り上げた文献を読み解くことにより、明らかにしている。 さらに、宮沢賢治の童話「よだかの星」、昭和55年に放送された『金八先生』、1980年代の教育に影響を与えた林竹二の授業論を取り上げながら、内なる公共性や内なる道徳性が絵空事ではなく、現実に根のはった事実であることを明らかにしようとしている。 今年度は、まだ不十分となっている先行研究及び現象学研究をとおした「内なる公共性」あるいは「内なる道徳性」について理論的に明らかにしたうえで、具体的な道徳教育の在り方についても研究を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究を読み解くのに少し時間がかかってしまっていて、少しの遅れを生じている。また2月以降先進校の道徳の授業観察等行う予定だったが、社会状況により予定通り進めることができなかった。だが、一方教育の実践(授業やいじめ防止)と現代社会の在り方の関連性にかかわる研究をとおして、現代の教育が教師の専門性を信頼せず、外側から管理しようとすることによって、本研究で明らかにしたいと思っている「内なる公共性」、「内なる道徳性」を抑圧してしまっているのではないかということが明らかになってきている。
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今後の研究の推進方策 |
長期休みなどに、ゆっくりと文献を読み解く時間をとることによって研究の理論的部分(内なる公共性、内なる道徳性について理論的に明らかにすること)についてスピードを上げて進めていくと同時に、個人と公共性の矛盾を解消し、内なる公共性を顕在化させることのできる道徳の研究を進め、そうした道徳をどのように道徳の時間、学級経営、各教科における話し合い活動で実現できるかについて検討を進める。現象学にもとづく理論的な考察をさらに進めると同時に、先進校等における授業観察を続け、理論的な考察をどうしたら授業実践に結びつけることができるかに焦点をあてて研究を進めていく。現象学にもとづく新たな視点をどのように実践に反映させることができるかを考えることが2020年度以降の中心的な課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末にコロナウイルスの影響等により、先進校への視察や研究協力していただける学校に対する調査が進まず、思うように研究を進めることができなかった。またバタバタしてしまって春休みに研究に打ち込むことができなかった。 いまだコロナウイルスの影響が続いており、先進校への視察や研究協力校における調査、さらには図書館における文献検索等はできない状況だが、そうした研究は夏以降に行うこととし、もし夏以降も状況が変わらない場合、研究方法の変更(たとえば文献調査に重きをおくなど)も含めて検討しなおすことにしたい。これからしばらくは、さらに文献等購入して理論研究の部分を進めておきたい。
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