研究課題/領域番号 |
19K02391
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
小玉 亮子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (50221958)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 幼児教育 / ジェンダー / 社会史 / 家族史 / ドイツ / ナチス期 / ペスタロッチ・フレーベル・ハウス |
研究実績の概要 |
本研究は、ナチス・ドイツにおいて、幼児教育がどのような役割を果たしたのかについて明らかにすることを目的としている。特に、ドイツの幼児教育の中心にあったドイツ・フレーベル連盟及びそこに参加していた有力な団体の一つであるペスタロッチ・フレーベル・ハウスの活動を分析の対象とする。この分析を通じて、ドイツの幼児教育とファシズムの関係を問うのみならず、幼児教育それ自体のもつ課題に迫ることを目指すものである。 この研究目的のため、研究開始1年目(2019年度)には、先行研究の整理と資料収集を行った。2年目(2020年度)にも、資料分析と並行して資料調査を予定していたが、年度当初からコロナ禍のため、渡独がかなわなくなったため、すでに収集しているペスタロッチフレーベルハウスに関する資料分析を集中的におこなった。このことによって、これまでワイマール期以降のフレーベルハウスのキーパーソンであったリリー・ドロシャーのみならず、ドロシャーとならぶ重要人物であるヒルデガルト・フォン・ギールケとヘニー・シューマッハーについて調査をすすめることができた。彼女等のバクグラウンド、すなわち、出身階層、宗教的背景(ユダヤ教かキリスト教か)、政治的イデオロギーが複雑に交差するなかで、それとの関係を不可避とするなか、幼児教育が構想されていることが明らかになった。 これまで光が当てられてこなかった人間模様から、怒涛の時代の幼児教育の矛盾と葛藤を明らかにすることを進めている。教育史と家族史を視野にいれて、研究を進めてきたが、これらの分析にはやはりジェンダーの視点が不可欠であることから、ジェンダー史の成果としてまとめていくことを進めている。この成果は、幼児教育学史会記念事業企画書に論文として掲載する原稿をまとめているところであり、2021年度に持ち越してしまったが、2021年度に学会発表をする予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
すでに収集した資料分析をすすめているものの、同時に、新たな資料の所在が明らかになってきている。それらのなかには、現地にいかなければ確認できない資料や、日本からは取り寄せることが不可能な資料が多い。2020年度当初は、2021年の1月以降に渡独する計画をたてていたが、コロナ禍が好転しないために、2020年度は全く渡独することができなかった。大変残念ながら、必要・不可欠な資料へのアクセスが制限されているために、研究の進捗状況がやや遅れていると言わざるを得ない状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、昨年度公表することができなかった論文の刊行に尽力することを第一の目的としている。2021年度こそ、年度末にコロナ禍の状態が好転することを期待したいが、いずれにせよ、状況の好転があるなしにかかわらず、基本的には、現在進めている資料分析を2021年度も中心としてすすめていきたい。 このような状況ではあるが、今年度は、これまでの成果の公表を重点的にすすめたい。幼児教育史学会の記念出版書の論文の刊行をすすめ、本研究の成果を学会内外にひろく公開することと、あわせて、学会での発表を予定している。また、ジェンダーの視点からの分析に重心をおいて、ジェンダー論の成果としても発信していくことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度当初は、資料調査を予定していたが、コロナ禍により渡独が全く不可能となった。このため、旅費と資料収集にかかる費用分を使うことができず、次年度使用額が生じることとなっった。今後の社会状況は不明瞭であるものの、2021年度末には、2020年度にできなかった資料収集を、渡独して行うことを計画している。
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