研究実績の概要 |
本研究は、ナチス・ドイツ期において、幼児教育がどのような役割を果たしたのかを明らかにすることを目的としている。特に、ドイツの幼児教育の中心にあったペスタロッチ・フレーベル・ハウスの活動を分析の対象としている。この分析を通じて、ドイツの幼児教育とファシズムの関係を問うのみならず、幼児教育それ自体のもつ課題に迫ることを目指すものである。 本研究の研究期間がちょうどコロナ下(2020-2022)と重なり、ドイツでの資料調査が2年間全くできなくなった。そのため研究期間を1年間延長し、2022年度と2023年度にベルリンでの資料調査をおこなうことができた。 この研究期間内で、5本の学会発表を行い、2冊の書籍に論考を寄稿し、また学術雑誌に、論文や関連する小論を併せて12本寄稿した。そのうち、特に、2022年「 20 世紀初頭のドイツにおける幼児教育の展開─ペスタロッチ・フレーベルハウスに焦点をあてて─」(幼児教育史学会・小玉亮子・一見真理子編『幼児教育史研究の新地平 下巻』萌文書林),「幼児教育におけるジェンダー・ポリティクス -ペスタロッチ・フレーベルハウスとナチズムの関係に着目して-」(日本教育学会編『教育学研究』第89号、第4号、pp. 27-39)の2本に加えて、2024年「激動の20世紀を「よき教師」として生きる-ヒルデガルド・フォン・ギールケの場合-」(『歴史評論』889: 17-31)の以上3本は、本研究の中心的な研究成果と位置付けることができる。特に最後のものは、ナチス期以降も射程に入れている点において、2024年度以降の研究成果とも言えるものとなっている。 今回の研究で、多くの新たな課題が見えてきた。ナチス期も含めて、戦争と混乱の時代の幼児教育の研究を継続して進めていく予定である。
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