研究課題/領域番号 |
19K02392
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
大和 真希子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (60555879)
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研究分担者 |
松友 一雄 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 教授 (90324136)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 教師のインターベンション / 教師の見取り / 学習者の協働性 / 学習者の思考の深まり / 授業の計画性との関連 |
研究実績の概要 |
本研究では、優れた授業を遂行する教師の力量を、①授業実施前における計画力(効果的な学習場面を構想する能力)と②授業実践段階における学習場面のマネジメント能力(効果的な学習場面を生み出し展開する能力)と捉えている。3年目に入った令和3年度は、新型コロナウイルスの感染が拡大したため、調査を行うことができなかった。しかし、福井県内の小学校および高等学校における授業研究会・公開研究会に参加する機会を得て、授業の計画性と、学習者の理解の深まりを生み出す教師の「インターベンション」を抽出し、授業における解釈と見取りの関連性の考察を進めることができた。 具体的な調査対象校は、鯖江市立惜陰小学校・大野市有終東小学校・勝山市成器南小学校・大野市尚徳中学校・福井県立大野高等学校である。感染対策を十分に行いながら各校に訪問し、授業計画段階で教師が作成した資料の検討および教師へのインタビューを行いつつ、ビデオカメラ、フィールドノートへの記述による多方向からの記録(教師・学習者・教室全体)をしながら、授業計画と学習場面の関係性を明らかにすることができた。 上記のデータ収集と分析を通して、本研究は現段階で、教師の教材分析や学習プリントの中身、板書・発問計画が実際の授業場面とどのように連動するのかを考察できており、令和2年度に集積したデータと合わせて、分析の妥当性を検討する段階に到達している。また小学校から高校に至る学習者の発達段階に応じて、教師のインターベンションがどのように変わるのかについての検討にも着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、従来から共同研究を行ってきた大阪府の学校における調査ができない状況であった。したがって、福井県内の学校現場と異なるフィールドでのデータを収集できず、調査の妥当性や分析・考察の精度をあげることができなかった。 しかし、上述したように、令和3年度は複数の小・中・高校において、授業の計画性(資料の中身、教材・教具、発問・板書計画)と、実際の学習場面との関連の分析を通して、教師の「見取り」と「インターベンション」の連続性がどのような学習効果を生み出しているのか、また、授業の計画性が実際の授業の学習場面にどう影響しているのかを分析することはできた。また、小学校段階で特徴的な教師の見取りや介入が、特に教科の学習の難易度があがる中学校や高校では、どのように変化するのか、さらには、その背景にある教師の意図や学習者の状況の違いが、見取りや介入の変化にどう関連しているのかも、明らかにしつつある。 ただし、研究の3年目に計画していた授業力(計画性と実践力)と学習場面の質の関係性については、詳細に分析・考察できていない。また、学習の質を高める要素の抽出(教師の見取りとインターベンション、教材・教具、板書の中身と学習場面の構造の関連性)にも至っていない。これらの点については、令和4年度に着実に進捗させ、成果を出したい。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度では、上記した学習場面の質との関連性を分析・考察するために、計画性と実践力の往還と、授業の中でのインターベンションの連続性が学習場面の質をどう高めているのか、それらが、教師の認識(授業観・指導観・学習者観)によってどのように異なるのかも検証していく。具体的には、授業の計画性と実践力の関連から明らかになった点をベースに、①学習者の学びがどう深まり、どう広がっていくのか、②教師の「見取り」と「インターベンション」、教材、教具、学習プリント、板書などの中身によって授業の「構造」がどう変わるのかを分析する。そして、教師の「見取り」と「インターベンション」によって支えられる個々の学習者の学びが、教室全体に広がり、集団の学びを生み出しているのかを分析し、学習場面に協働性を生み出すための教師のマネジメント能力の抽出する。 最終年度のゴールとしては、効果的な学習場面を生み出す教師の計画力・実践力と、各学校段階で異なる教師の専門性との相関を明らかにすることを目指している。そのため、優れた授業実践を展開する教師に焦点を当て、その教師の「見取り」を支える授業観、指導観、学習者観の特徴、相互の関係性を抽出する。それを通じて、①長期的な授業計画・遂行する力量の類型化、②日々の授業のどのような省察・記録・蓄積が実践的力量の形成に効果的であるのかを検証する。さらに、③学校段階による教師の専門性との違いと教師の授業力との関連性の分析・考察を行う。各学校段階の教師がもつ認識(授業観・指導観・学習者観・学力観)や教職経験が、授業計画と実践力にどう影響を及ぼすのかを分析・考察し、具体的な学校間の連続性を抽出することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、他県における学校訪問や教員との協働研究ができず、研究旅費を支出できなかったことが最も大きな理由である。また、集積したデータの整理やフィールドノーツの整理、授業映像からプロトコル作成に従事してもらうアルバイト依頼しておらず、人件費が未使用であることも理由である。 (使用計画) 令和4年度(最終年度)は次の内容をアルバイトに依頼する予定である。 ①これまで集積してきた授業データ、教師へのインタビューデータの整理、②フィールノーツ、授業指導案、教材、板書データの整理、③授業映像からプロセスレコードを作成(教師と学習者の対話の文字化)、学校種、教科 ごとの整理よって、人件費は計画通りに支出可能と考えている。また、感染状況をみながら、全国の授業公開研究会や学会発表だけでなく、他大学での資料収集、他県での授業研究・教員へのインタビュー調査を計画し、最終的な成果報告書の執筆につなげたい。
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