第1に,本研究において構築した企業家のデータ分析を進めた。研究を通して得た新たな知見に基づいて,丁稚経験をした者が起業する際の「主家」(丁稚先の「主人」)との関係を分析した。この分析に付随した戦前期日本の「処世術」に関する研究成果を公表した。第2に,前年度から進めている松田一郎(独立開業してゴム底布靴・ゴム底革靴の製造事業者となった企業家)のケース・スタディ分析をした。新型コロナ・ウィルスの影響が少なくなったため調査を進めたが,松田によって設立された子宝靴工業(株)の経営実態を把握できる史料が極めて限られていることを確定できた。そのため,研究方針を修正し,戦前期の松田の技術開発に特化することにした。経営実態には言及できないものの,本研究で明らかにすべきテーマから離れるまでには及ばない。第3に,小樽高等商業学校の史料を用いて,生徒の就職要因について分析した。この研究では,一次史料を通して生徒の人物(性格等),成績,縁故,身体(体格等)が就職に関わる要因を分析した。
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