2023年度も外在研究は実施できなかったが、国内調査活動はおこなうことができた。すなわち、高知県四万十市下田地区における学校統廃合政策に対して、当事者として請願の取り組みなどをおこなった生徒、および保護者や地域住民の方々から聞き取りをさせていただくことができた。また、学校を基礎とした教育自治モデル構築に関しては、教育の自律性を支える民主主義のかたちについて論文をまとめて発表した。 2019年度から3年間の予定で開始した本研究は、途中コロナ禍により2年間の延期を余儀なくされたが、以下の成果をあげることができた。 (1)2019年にニュージーランド・ワイカト大学教育研究所を拠点に調査を実施できたことにより、1989年教育法が2020年教育法に再編される過程を調査する機会に恵まれた。その結果、学校理事会制度が存続した経過を明らかにすることができた。 (2)同時に、2019年には対面にて、ニュージーランドにおけるマオリ教育自治モデルを実践し研究されておられるグラハム・スミス特別教授を首都大学東京にお呼びして、公開研究会を開催することができた。また、2020年には、コロナ禍による制約でオンラインに変更とはなってしまったが、ワイカト大学教育学部のマーティン・スラップ教授を迎えて「学校自治と教育スタンダード」をめぐるシンポジウムを開催できた。これらを通して、ニュージーランドと日本の間で、一定の研究交流をすすめることができた。 (3)日本における三者協議会の取り組み事例調査をこれらニュージーランドでの調査と重ねることで、教育実践の自律性を守ることのできる、教育機関の管理運営のあり方が、教育政治のあるべきかたちとして調査研究されるべき固有の研究課題になりうることを論じることができた。
|