研究課題/領域番号 |
19K02403
|
研究機関 | 稚内北星学園大学 |
研究代表者 |
小林 伸行 稚内北星学園大学, 情報メディア学部, 講師 (60827153)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 社会関係資本 / 成人期 / 社会教育 / 生涯学習 |
研究実績の概要 |
本年度も、新型コロナウイルスの蔓延によって研究の条件・環境が十分に整わない状況が断続的に発生し続けたため、当初計画していた調査を十全に進めることはできなかった。しかし一方で、当初の想定以上に広範な先行研究・論点の整理を更に進めることができたため、子ども期における社会関係資本とその教育的効果に関して先行研究が看過していた理論的な問題点をいくつか浮き彫りにすることで、成人期との比較や成人期への援用をし易くする糸口を見出せた。
その一つは、関係(者)の多寡に焦点が当てられがちな社会関係資本において、関係(者)の質的な相違点にもより注意を向ける必要性である。例えば、小学校の児童を対象とする先行研究では主に家族・友人・地域住民との関係に基づいて社会関係資本が指標化されており、児童間で差が生じないとの想定のためか教師との関係が度外視されているが、教師こそが最も教育効果に影響し得るという意味で特異的な関係者であって本来無視することはできない。このような問題点を解消しないかぎり、子ども期において不登校など教師との関係が事実上構築できていない場合を視野に入れにくいのはもちろん、成人期において教育的効果への寄与度が高い関係者を子ども期の教師と比較することや、ネットワーク理論等の知見を援用することなども難しいままとなることが確認できた。
また、子ども期の教育的効果としては主に学力の向上が念頭に置かれているものの、それは学習することが自明視されがちな児童生徒が対象だからであって、成人期では学習量や学習時間の増大自体も十分に教育的効果と見做せる可能性が残されている点も挙げられる。特に、直接・短期的には学力向上に結びつかないとしても、学習量の増加が逆に関係の維持や拡大にもつながることで、社会関係資本が間接・長期的に学力向上につながる場合なども成人期では看過できなくなることが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
主たる要因は、新型コロナウイルスの蔓延が終息せず、研究の停滞や修正を余儀なくさせる要素が複合的に、断続的に引き続き生じ続けたことである。
対面状況での調査実施が制約を受ける側面は緩和傾向にあったものの、社会全般において人的交流が途絶えがちになったことで社会関係資本に関する多くの前提条件が先行研究と異なってしまい、比較・検証等の研究過程に支障が生じる側面では本年度も広範な影響を受け続けた。コロナ禍の影響が残る状況では、どの程度まで先行研究と前提条件が異なっており、どこまで比較や援用等ができるのかということ自体を検証する調査・研究の過程も必要になったが、調査の必要性が増える一方で調査可能な環境や期間は十分に確保できない状況が続いたことで、想定以上に進捗への影響が大きくなった。
|
今後の研究の推進方策 |
人的交流や社会関係の様態がコロナ禍以前と以後とでどれだけ異なるのかを精確に把握できるように研究計画を適宜修正した上で、あるいは必要であればコロナ禍以前の状況まで十分に戻るまでさらに延期した上で、より効果的な調査の実施と結果の分析、および最終的な成果報告を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
主な理由は、新型コロナウイルスの蔓延や派生的な影響の数々によって、計画していた調査の一部を事実上凍結せざるを得なくなったり、修正・調整した上で効果的に実施するべく一時延期したりする必要性に迫られたためである。研究の条件・環境が整うのを待って実施する予定の調査のための消耗品費その他の経費として充当する予定である。
|