研究課題/領域番号 |
19K02406
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
坂田 仰 日本女子大学, 教職教育開発センター, 教授 (70287811)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | いじめ防止対策推進法 / いじ重大事態 / 第三者委員会 / いじめ裁判 |
研究実績の概要 |
2013年のいじめ防止対策推進法の施行から既に6年以上が経過した。しすし,同法の学校現場への定着は未だ十分とは言い難い状況にある。特に,同法が規定する「重大事態の調査」に関わっては,その在り方を巡って被害者側と学校設置者(教育委員会,学校法人),学校が対立し,多くの混乱が生じている。本研究の目的は,この混乱の止揚を目指し,いじめ防止対策推進法,特にいじめに関する「重大事態の調査」の在り方について学際的視点から研究することにある。 初年度である本年度は,学校現場と教育行政におけるいじめ問題担当者の「いじめ防止対策推進法」に対する意識について重点的に調査,検討を行った。「ヒアリング調査の対象となった範囲において」という限定が付されるものの,結果として,学校現場,教育行政において直接いじめ問題への対応を担当する者のレベルにおいてさえ,いじめ防止対策推進法,いじめ重大事態調査「第三者委員会」に対する理解が未だ不十分であることが明らかになった。 また,いじめ問題に起因する裁判例の分析からは,いじめ防止対策推進法の制定を受けて,学校側の対応責任についてより厳格に解される傾向が一部で顕著になっていることが明らかになった。この結果は,担当者レベルにおけるいじめ防止対策推進法に対する理解不足と相まって,学校現場におけるいじめ問題への対応に関し早急な対策を講じる必要性が高いことを示唆するものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス問題の影響を受け,2020年1月~3月に予定していたヒアリング調査等の実施に支障が生じた。同時に,ヒアリング調査の分析を受けて実施する予定となっていたアンケート調査の準備にも遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
第一に,新型コロナ問題の影響で延期となっている教育委員会担当者に対するヒアリング調査を優先的に実施する。また,新たに複数の自治体においてヒアリング調査を実施し,調査結果の一般性の向上に努める予定である。 第二に,ヒアリング調査の結果を分析し,教育委員会担当者,学校管理職,生徒指導担当者に対するアンケート調査実施に向けた準備を進める。その第一段階として調査項目等の検討を進めるとともに,実施対象となる自治体,学校との調整を行っていく予定である。 第三に,いじめ重大事態「第三者委員会」の構成員に対するヒアリング調査の実施に向けた準備として,対象ケースの選定,交渉を進めていく予定でる。 第四に,今年度に引き続きいじめ問題に関わる裁判例の収集に努める。裁判例の分析を通じて,いじめ防止対策推進法,いじめ重大事態「第三者委員会」の対応すべき課題,抱える問題点について,法的側面から更なる検討を加える予定である。 なお,新型コロナ問題への対応のため計画の遂行に支障が生じた場合は,データベースを活用し,裁判例の収集,分析に力点を置くことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ問題の影響を受けて,2020年1月~3月に予定されていた訪問調査,資料収集等が,やむなく中止,先送りとなった。そのため,旅費等の支出計画に大幅な変更が生じることになった。
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