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2021 年度 実施状況報告書

いじめ重大事態調査「第三者委員会」の浸透と限界

研究課題

研究課題/領域番号 19K02406
研究機関日本女子大学

研究代表者

坂田 仰  日本女子大学, 教職教育開発センター, 教授 (70287811)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードいじめ防止対策推進法 / いじめ重大事態 / 第三者委員会 / いじめ裁判
研究実績の概要

2021年度は,学校によるいじめ問題への対応に関わって,対「保護者」という観点から調査,分析を行った。新型コロナウイルス問題の影響で一部調査を断念したものの,実施できた調査の分析から,以下の点が明らかとなった。
具体的ないじめ問題が生じた際,管理職,教員は,いじめ防止対策推進法にのっとり,いじめの加害者とされる児童・生徒の保護者,いじめの被害者とされる児童・生徒の保護者を対象とし,いじめ問題への対応について説明責任を果たし,協力を求めることになる。いじめ防止対策推進法によれば,ここでいう保護者は,「親権を行う者(親権を行う者のないときは,未成年後見人)」(2条4項)が想定されている。この規定は,民法の親権に関する規定を前提とする学校教育法の系譜に属するものといえる(法的保護者)。
教頭を対象として実施した調査の結果によれば,少なくとも大部分の教頭は保護者について法的定義が存在することを認識していた。しかし,いじめ問題への対応については,いじめ防止対策推進法における保護者の概念に囚われることなく,同居人や祖父母等を含めてフレキシブルな対応が取られていることが明らかになった(実務上の保護者)。
このフレキシブルな対応がとられている理由は,たとえば,いじめ防止対策推進法第23条第5項が規定する「いじめの事案に係る情報の共有」をめぐって,学校現場には多くの対立が存在し,法的保護者を対象とした情報共有だけでは「争い」を防止することは困難であるという認識に基づくものであることが明らかになった。重大事態への発展を防止するという観点からは,実務上の保護者という概念をより積極的に活用していく必要があるという点が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

新型コロナウイルスの流行に伴い,長期にわたり蔓延防止措置等がとられた関係で,アンケート調査,ヒアリング調査を予定していた複数の自治体から受け入れ困難という連絡を受けた。新型コロナウイルス問題がもたらした学校現場の混乱,多忙化を鑑みる限り,予定していた調査を延期もしくは中止とせざるを得なかった。

今後の研究の推進方策

今後の研究については,新型コロナウイルス問題の状況によって左右される部分が存在する。特にヒアリング調査については,新型コロナウイルス問題が学校現場に与える影響に強く依存する部分があり,不透明なな状況といえる。しかし,現時点においては以下のように研究を進めたいと考えている。
まず,新型コロナ問題の影響で延期となっている教育委員会担当者に対するヒアリング調査を優先的に実施したい。
次に,いじめ重大事態「第三者委員会」の構成員に対するヒアリング調査に取り組みたい。対象ケースの選定,交渉はすでに終えており,なるべく早い時期に実施したいと考えている。
そして第三に,上記二つの調査に関する分析を行い、報告書を作成する予定である。
最後に,昨年度に引き続きいじめ問題に関わる裁判例の収集に努めたいと考えている。いじめ防止対策推進法の制定から10年近くが経過し,裁判例の集積も一定程度進んでおり,その分析を通じて類型化を図っていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス問題の影響により計画していたヒアリング調査,アンケート調査の実施に支障が生じた結果である。2022年度において,調査範囲を拡張し,延期した調査を実施したいと考えている。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] いじめ防止対策推進法における「保護者」に関する覚え書き2022

    • 著者名/発表者名
      坂田仰
    • 雑誌名

      スクール・コンプライアンス研究

      巻: 10号 ページ: 6-17頁

    • 査読あり

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公開日: 2022-12-28  

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