研究課題/領域番号 |
19K02409
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
志村 聡子 立正大学, 社会福祉学部, 教授 (50406609)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 三田谷啓 / 母の会 / 児童保護 / 大阪母の会 / 西脇りか |
研究実績の概要 |
三田谷啓(さんだやひらく、1881-1962)は、三田谷治療教育院(兵庫県芦屋市)を設立したことで知られる医師・教育家である。三田谷は、同院を拠点に各種事業を展開した。本研究では、特に母の会事業に着目し、その実態を明らかにしようとしている。三田谷の手がけた母の会事業では、各地でその地域の地名を冠して「○○母の会」などと称して組織化が促されていた。前年度(2019年度)は「大阪母の会」を中心とした論文を執筆し、公刊した。
交付申請書においては、初年度(2019年度)に「阪南母の会」と「甲陽母の会」を調査する予定であったが、予定を変更して母の会事業の前史を明らかにすることにし、「大阪母の会」を中心に事業の概要をまとめた。三田谷が主宰した雑誌『母と子』誌の検討により、ほぼ毎号に「母の会」関係記事(多くは例会等の実施状況)が掲載されていたことがわかった。主要な「大阪母の会」と「甲陽母の会」だけでなく、他の「母の会」記事も順次掲載されていた。同誌10巻2号~24巻11号(1929年2月~1943年11月)に、記事が1回以上掲載された団体の数は、計47団体にのぼった。
交付申請書において、2020年度(当該年度)には「大阪母の会」と「奈良母の会」について調査する予定であったが、「大阪母の会」の会長を務めた西脇りかについて着目するに至った。西脇りか(1879-1971)は、大阪府尋常師範学校女子部卒、東京女子高等師範学校文科卒の経歴をもち、福井県高等女学校、大阪府立堂島高等女学校、ウィルミナ女学校で教諭を歴任、1913(大正2)年から1934(昭和9)年まで大阪女子師範学校教諭兼舎監を務めた人物である。西脇は文部省系の大日本連合婦人会で理事の任にもあった。西脇は当地で有力なリーダー格の女性であったが、三田谷と親しい関係にあったことが明らかになったことは成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、関西地方で資料収集を行うことが重要であるが、新型コロナウイルス感染症流行の関係で2020年度は移動をすることができなかった(報告者は関東在住)。新型コロナウイルス感染症流行に伴い、籍をおく大学においてオンライン授業を実施することになり、その対応に追われる日々となってしまい、研究に費やす時間を取ることに難しさがあった。こうした予期していなかった状況により、研究に大きな支障が出ている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も新型コロナウイルス感染症流行により、移動に制限が出ている。こうした状況ではあるが、三田谷啓の研究において先駆的に取り組んでいる方々のご協力を得て、複写資料を貸借するなどして資料収集を行い、その分析を行って研究を進める。あわせて、これまで自身で収集した資料をていねいに読み直すなどして、これまで収集した資料を有効に活用する方策も検討する。
注目するに至った西脇りかについて、その足跡をたどり、西脇を「大阪母の会」会長に迎えた意味について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
計上した旅費について、新型コロナウイルス感染症流行の関係から、全く執行することができなかった。主に執行したのは、書籍費と消耗品費にとどまった。次年度に使用額を繰り越して、旅費の予算執行を行い、研究を進めたいと考えた。
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