研究課題/領域番号 |
19K02410
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研究機関 | 清泉女学院大学 |
研究代表者 |
松原 信継 清泉女学院大学, 人間学部, 教授 (30593545)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スクールロイヤー / 教育メディエーター / 子どもの権利 / 学校の法化 / チーム学校 / 学校紛争解決 |
研究実績の概要 |
今年度初めにおいては、昨年度に引き続き、スクールロイヤーを導入している全国の教育委員会・学校・スクールロイヤーの三者に対して「スクールロイヤーの活動に関わる調査」アンケートを継続して実施した。同アンケートは、①スクールロイヤー制度の概要と現状、②「チーム学校」との関係、 ③スクールロイヤー導入の効果と影響、④スクールロイヤーが有効に働くための条件等を柱として21~29項目の質問を設けたものであるが、こうした幅広い観点に立ったスクールロイヤーに関する全国アンケートは初めてのことで、文科省によってもなされておらず、意義を有するものであると考える。 アンケート結果の分析からは、上記の三者の間のスクールロイヤーへの捉え方や期待することへの違いが浮かび上がり、新型コロナウイルス感染症の影響で回収数こそ十分ではなかったものの、アンケートを実施した目的はほぼ達成することができた。同アンケート分析から得られた知見については、報告者、および、アンケートの共同実施者である間宮静香氏(愛知県弁護士会・子どもの権利委員会副委員長)、伊藤健治氏(東海学園大学)とともに、日本教育政策学会第27回大会・自由研究発表(2020年7月3日~5日)において報告発表を行い、一定の評価を得た。 さらに、今年度末からは、「『子どもの権利』を保障するスクールロイヤー制度の確立をめざして」(仮題)というタイトルの一般向け書籍の出版計画に着手し、準備を進めてきた。これは、書籍の出版を通して本研究の成果を、全国のスクールロイヤー担当者、各地弁護士会、教育委員会、学校関係者、および、市民に向けて発信し、それによって、真の意味で「子どもの最善の利益」を実現し得るような効果的なスクールロイヤー制度の確立に役立たせることを目的とするものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の大きな目標であったアメリカ合衆国カリフォルニア州における調査が、訪問先まで決定しておきながら、新型コロナウィルス感染症による渡航制限のため実現できない状態が続いている。「研究実績の概要」で述べたアンケート結果からも、スクールロイヤーによる調停の在り方、その是非が大きな争点として浮かび上がっており、同国の調査はますます不可欠のものとなっている。渡航制限の緩和とともに、速やかに米国調査を実施し、教育や学校をめぐる弁護士(education lawyerないしeducation attorney)とメディエーター(education mediator)の連携協働の具体像を探求したい。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」で述べた本研究に関わる出版の原稿執筆期限を12月中旬に設定している関係上、なんとか今年度の秋には米国調査を実施し、その成果を出版物の中に盛り込みたい。 現在、スクールロイヤー制度は急速に全国に広まっているが、十分な学問的探究もなされないままに事態が進行していることに報告者は危機感を抱くものである。事実、ここ数年で何冊かのスクールロイヤーに関する書籍が出版されているが、いずれも実務家の弁護士の手によるものであり、研究者によるものは未だない。幸い、本研究については、愛知県弁護士会および三重・岐阜等の近隣の弁護士会、とりわけ、子どもの権利委員会所属の弁護士諸氏の全面的な協力を頂いて進めているものである。その利点を活かし、今後は、法曹人と研究者(教育学・教育法学等)のコラボレーション体制をさらに強化し、両者の協力によって生み出された研究成果を上述の出版物の中に反映させるとともに、各自治体のスクールロイヤー制度づくりにおいて具体化していくことに努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたアメリカ合衆国カリフォルニア州における調査が、新型コロナウィルス感染症による渡航制限のため実現できず、そのために計上した費用が未使用となっている。 本研究は、教育において、弁護士はもちろん、メディエーターの活躍が盛んである米国でのヒアリング調査が不可欠であり、すでに5か所以上のカリフォルニア州内での訪問先も決定していることから、渡航制限が緩和されれば、速やかに、研究協力者である日本の弁護士等を伴って米国調査を実施したいと考えている。2020年度の未使用分は当該海外調査の遂行のために使用する計画である。
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