研究課題/領域番号 |
19K02415
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
篠原 岳司 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (20581721)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 町立高校 / 町立移管 / 奥尻町 / 教育行財政 / 教育ガバナンス |
研究実績の概要 |
初年度は研究目的および計画に沿い、都道県立高等学校の初の町立移管の事例となった奥尻町立奥尻高等学校と奥尻町の調査を実施し、その調査結果を論文に公表した。 簡単に概要を説明したい。北海道南西部の奥尻島にある奥尻町は2016年4月に地元の道立高校の町立移管を行った。本研究では、その学校移管するための北海道教育委員会との交渉過程、町長をはじめとする町と町教育委員会の意思決定過程、および移管前から移管後の町の教育支出の変化について明らかにすることができた。また、町立移管後の高等学校の教育および町にとっての高校の意味付けにも変化が訪れたことも詳細に明らかにできた。町立化が背景となり、高校では校長のリーダーシップと町教委との協議が円滑になり、「まなびじま奥尻」と呼ばれる新たなカリキュラムの設計と実践、そして島外からの生徒募集の実現のように、町立化初年度から奥尻町と奥尻高校にとって極めて重大な改革が迅速に進められたのであった。 本研究は、町立移管に伴う変化を具体的事例から具に明らかにすることで、町が都道県立高校の設置者になることの教育行財政上の意義と課題を抽出することに成功したと言える。都道府県立高校の町立移管はこの奥尻町の事例のみであり複数のケーススタディは不可能であるが、引き続きこの奥尻町の町立化後の町と高校のフォローアップを進めること、そしてその後の北海道教育委員会との関係の変化について調査を進めることで、現在の少子高齢化と過疎化で小規模化する都道府県立高校の新たな教育ガバナンスの形態を追究していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に主たる研究課題で都道府県立高等学校の町立移管の事例を具に明らかにし、論文で公表できたことは重要な進展だった。COVID-19の影響のため年度末期の研究遂行に支障が生じており、次年度の課題にもいかなる影響を及ぼすかが心配である。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の影響が続くと調査計画の遂行が困難になる恐れがある。ただし、初年度の研究成果に基づき、今後は奥尻事例のフォローアップとともに、他の類似する事例について調査研究を進めていく予定である。具体的には、北海道の三笠市にある三笠市立三笠高等学校にかかる教育行財政調査、また、奥尻町と奥尻高等学校との関係についての北海道教育委員会へのヒアリング調査である。また、研究計画調書にあるように、移管をせずとも地元市町村との優れた連携を進める都道府県立高校の事例についても、教育行財政および政府間関係の視点で調査準備を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
た2019年度末に実施予定だった調査にかかり旅費や謝金等の支出を予定していたが、COVID-19の被害が深刻化したことにともない、全ての調査研究が中止となったことから次年度使用額が生じた。次年度に研究調査を実施できるよう準備中であり、その必要経費として支出する計画である。
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