研究課題/領域番号 |
19K02415
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
篠原 岳司 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (20581721)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ローカル教育ガバナンス / 学校設置者移管 / 奥尻町 |
研究実績の概要 |
令和2(2020)年度の研究は、新型コロナウイルス感染症の影響で大幅に支障をきたしたといわざるを得ない。当初から予定していた複数自治体および学校における資料収集の機会を創出することができず、本年は非常に限られた時間と機会の中で、従来から関係を強めていた調査対象自治体および学校におけるデーター収集と分析に留まったところである。以下にその概要を示す。 (1)奥尻町教育委員会における高校教育行政過程の解明 2016年に北海道立から奥尻町立へと学校設置者移管を行った北海道奥尻高等学校の学校経営に関わり、それまで高校教育行政に関わりの無かった地元奥尻町教育委員会内部の高校教育行政過程の変化を追究した。新型コロナウイルス感染症の影響で、特に離島で医療不安の強い奥尻町への訪問機会が限られ、リモートでの聞き取りや情報収集が中心であったが、年度末に奥尻町を訪問する機会が得られたことにより、町教育長および町教委職員2名に長時間にわたる半構造化面接を実施することができた。その結果、端的に申せば、新型コロナウイルス感染症対策に揺れた令和元年から令和2年度の町の高校教育行政の全容を、町教委職員の具体的な施策の考案と実施の観点から明らかにすることができたと考えている。 (2)北海道奥尻高等学校の学校経営にみるローカル教育ガバナンスの構造変容事例の解明 新型コロナウイルス感染症対策に揺れた奥尻高校では、全国各地から島留学制度で入学する生徒の島内への受入をめぐり、校長を中心に町役場(町長、副町長)と町教委(教育長他職員)との密接な連携体制が築かれ、迅速で臨機応変な対応を可能にさせていた。校長以下教職員への半構造化面接によりその内容と過程に関わるデーター収集が完了しており、(1)の町教委の高校教育行政過程の解明と総合させた奥尻町を事例とするローカル教育ガバナンスの変容の詳細を解明する見通しが見えてきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」にも示したように、本年度は複数自治体における調査研究に着手する当初計画であったため、それが新型コロナウイルス感染症の拡大の影響から全く実施することができなかった。研究計画にあるローカル教育ガバナンスの構造変容の解明については、従来からつながりの深い自治体(奥尻町)に追加調査をかろうじて実施することができ、成果公表の目処もついたことから、唯一研究成果として述べられる点である。とはいえ、他自治体との比較調査が実施不能であった点、ローカル教育ガバナンスの構造変容に関わる他の資料収集および分析に着手できなかった点をふまえれば、「(4)遅れている。」と自己評価せざるを得ず、新型コロナウイルス感染症の影響が今後も続く中でいかに研究課題を遂行できるか、大幅な計画の見直しが迫られているのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
令和3(2021)年度は、昨年度に実施できなかった複数自治体における調査研究に着手し、奥尻町における学校設置者移管の事例との比較研究に着手することが最大の課題でる。そのための方策として、①新型コロナウイルス感染症の影響に伴う所属大学の学内業務の効率化を図りながら、昨年度は大幅に削られた研究時間の再創出を追究する事、②移動の制限が見込まれる中だが、感染症対策の徹底による信用の創出によって、新規に地方自治体および学校への訪問調査の交渉を進める事、そして③研究補助員等の短期雇用等によって資料分析および整理の効率化を進め研究成果公表にむけた速度をあげる事、が重要となる。昨年度からの研究経費の繰越もあり、本年度に使用できる研究費の額が当初計画より増加していることも踏まえ、積極的に上記の3点を対策として進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、当初実施予定だった複数自治体への訪問調査が未実施となり、それにかかる総合経費(旅費、謝金等)の支出が無かったことから、次年度に額を残すこととなった。次年度は、本年度に未実施だった調査研究を新型コロナウイルス感染症の影響の低減に努め、計画的に実施する予定であるため、多くはその調査研究の経費として執行する計画である。
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