研究課題/領域番号 |
19K02425
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
羽田野 慶子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 准教授 (50415353)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 男女共同参画 / ジェンダー平等 / 婦人教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、1970年代後半から現在までの期間を主な対象とし、大都市圏/地方都市の自治体および女性関連施設で実施された男女共同参画事業/学習プログラムの内容を通時的に分析し、それらが内包する共通のジェンダー・ポリティクスを明らかにすることを課題とする。自治体および女性関連施設の男女共同参画事業は、婦人教育パラダイムの延長上に展開されつつ、男女共同参画政策としてより広範な役割を期待されるようになって以降も、常にジェンダー課題にとどまらない政策的要請に対応しながら変化してきた。これまで男女共同参画学習に関する研究は実践報告が中心であり、学習内容そのものの批判的分析や女性政策全体の展開をふまえた評価は十分に行われていない。「何が政策課題となったか」だけではなく「何が政策課題とならなかったか」に着目し、行政主導によるジェンダー平等化プロセスの特徴と限界を考察する。当該年度の研究実績は以下の通りである。 ①地方自治体の男女共同参画事業と女性関連施設に関する論考の収集・分析:1970年代以降の男女共同参画事業に関する行政文書と婦人教育政策史に関する先行研究をレビューし、各地の自治体等で行われた男女共同参画事業・学習に関する記録を収集した。訪問調査が困難であったため、ウェブサイト上に公開された情報・文献の収集を中心とした。 ②国立女性教育会館事業の実践記録収集:国の政策に先行する形で男女共同参画事業を実施していた東京都・横浜市の事例調査とともに、政策の地方波及のための拠点となった国立女性教育会館の学習事業記録を収集した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
男女共同参画学習事業の事例について、各地の自治体へ訪問調査をする計画であったが、県外出張自粛のため、文献およびオンラインによる調査を中心とした。
女性関連施設を対象とするデータベースの代表的なものとして、国立女性教育会館による「女性関連施設データベース」は、1998年度以降の学習・情報・相談事業の概要が集積されており、各地の女性関連施設の実施した事業を網羅的に探索できるため、このデータベースをもとに予定していた自治体のほか、調査範囲をやや広げて調査を行った。また、横浜市男女共同参画センターを運営する財団法人横浜市女性協会(当時)が編集・刊行した『女性施設ジャーナル』(1995~2003)は、女性関連施設に携わる実践者・研究者の貴重な発表媒体であり、女性関連施設の役割、事業内容、学習プログラムの方法と評価等についての実践報告が行われているため、事業内容の分析対象としてこの媒体を利用した。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に関しては、当初の予定では韓国の女性教育のナショナルセンターであるKWDIへの訪問調査を行うことにしていたが、海外出張自粛のためこれは行わず、引き続き国内での事例収集と分析を継続することとする。国内においても現地調査は困難であるため、1970年代以前の状況も含めて文献調査を中心とする女性関連施設の実施事業に関する時系列分析の射程を伸ばすことで、研究計画を一部補完したいと考えている。 婦人教育政策の歴史に関する先行研究は、先駆的なものとして千野陽一による歴史研究、続いて代表的なものとして、日本社会教育学会編『日本の社会教育』第26集(特集「婦人問題と社会教育」)所収の西村(1982)、同じく第45集(特集「ジェンダーと社会教育」)所収の各論文(2001)をはじめ、女性問題学習に関する村田(2006他)、社会教育行政の立場から書かれた日高幸男(1973他)、志熊敦子(1990他)、また戦後の女性政策を通史的に分析した横山文野(2002)、神崎智子(2009)等があり、本研究ではそれらを含めて女性政策全体の歴史的展開と関連づけることを目指したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
出張自粛のため国内旅費が未使用となったため。今年度も原則として出張調査は行わず、文献・オンライン調査を中心とするため、図書購入、印刷費、分析用ソフト等の購入に充てる予定である。
|