本研究の目的は、協働構築型(Co-careering)アプローチが北欧及びバルト三国のキャリアガイダンス実施者養成カリキュラムに与えるインパクトと、実施者に求める能力要件を明らかにすることで、日本のガイダンス実施者育成への示唆を得ることであった。最終年度は主に2つのことに取組んだ。1点目はノルウェーのKarriereveiledning.noにおける実践に関する調査を進めたことである。ノルウェーでは対面とデジタルのキャリア支援を繋げる「統合的デジタルキャリア支援」のフレームワーク開発と実践が進んでおり、アフターコロナにおける日本のキャリア支援にも参考になり得る新しい取組である。この点については現在調査を継続しており、研究結果については次年度に論文としてまとめて発表する予定である。2点目はこれまでの研究成果をもとにクライアント(特に若年層)のキャリア形成に係る情報収集・活用能力を向上させるテキストを開発し出版したことである。 上記以外の研究期間全体における主な研究成果としては、まず、協働構築型(Co-careering)アプローチは北欧の研究者やユーロガイダンスが実施するガイダンス実施者向けの継続教育の中で普及しつつあることを明らかにしたことがあげられる。こうした継続教育のカリキュラム分析に加え、デンマークeGuidanceの4Cモデルとそれを活用した専門家の能力開発の仕組み、そしてエストニアのキャリア支援専門家の資格要件を詳しく調査してその結果を公表することで、日本の専門家の能力開発に一定の示唆を提供することができた。 また今後、AIを活用したキャリア支援や採用選考に関する研究、例えばAIを活用した採用選考に対する学生の意識に関するジェンダーや専攻による差異等の研究が求められていることも明らかにした。この点についても今後継続して研究を続けたい。
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