研究課題/領域番号 |
19K02434
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
大川 洋 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (70247203)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エラスムス / コメニウス / リンゲルベルク / エルペニウス / 『学習の方法について』 / 『痴愚神礼讃』 / 『新約聖書釈義』 / 理性 |
研究実績の概要 |
2019年8月21日(水)から8月30日(金)までカナダのトロントに滞在し、トロント大学宗教改革ルネサンス研究所およびトロント大学図書館(Robarts Library)での文献探索・研究をした。コメニウス は、エラスムスの『学習の方法について』の1652年版に序文を書いているが、その序文の内容は教育学研究者の間でまったく知られていない。エラスムスの『学習の方法について』の1652年版は、ケンブリッジ大学に所蔵されていることは確認できたが、他にもその序文の所在が分かり、入手することができた。エラスムスの『学習の方法について』は、リンゲルベルク(Joachim Fortius Ringelberg)の『学習の方法について』とセットになって出版されていることも、今回初めて分かった。そのため、エラスムスとリンゲルベルクとの関係や、リンゲルベルクの『学習の方法について』の内容についても調査した。エラスムスの『学習の方法について』とリンゲルベルクの『学習の方法について』をセットで出版したのは、コメニウス が最初ではなく、エルペニウス(Thomas Erpenius, 1584-1624)が序文を書いたものが1634年に出版されていて、その現物の所在についても確認した。コメニウス は、エラスムスの『学習の方法について』のみならず、『痴愚神礼讃』のオランダ語訳も出版していることが分かった。 現在、エラスムスの『新約聖書釈義』の英訳が出版されつつあり、エラスムスの聖書解釈の特色についての研究が進んでいることも分かった。それらを踏まえ、論文としては、「エラスムスにおける理性と教育」という論文を完成させ、日本の学会誌に投稿した。これは、エラスムスの教育思想を彼の聖書解釈に基づいて理解する最初の試みとして位置付けられるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コメニウスがエラスムスの『学習の方法について』の1652年版に記した序文が入手できたので、現在、その序文をラテン語から日本語へと翻訳する作業に着手している。コメニウス の教育思想に与えたエラスムスの影響については、まだ論文にする段階には至っていない。 研究計画では、「エラスムスにおける人間の尊厳」という論文を作成するとしていたが、2019年度においては「エラスムスにおける理性と教育」という論文を作成することとなった。これも、エラスムスの教育思想を彼の聖書解釈に基づいて理解する最初の試みとも言えるものだが、「エラスムスにおける人間の尊厳」という論文に着手するのが遅れたことは否めない。「エラスムスにおける理性と教育」という論文の内容をさらに一歩前進させ、「エラスムスにおける人間の尊厳」という論文を完成させたい。
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今後の研究の推進方策 |
コメニウス が序文を書いたエラスムスの『学習の方法について』の1652年版は、ケンブリッジ大学に所蔵されていることを確認していたが、ケンブリッジ大学に行かずに、その序文を入手することができた。そのため、イギリスでの文献探索・研究の拠点をロンドン大学ウォーバーグ研究所(ワールブルク研究所;The Warburg Institute)に変更する予定である。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大のため、海外への渡航ができなくなる可能性も視野に入れ、2019年度にトロント大学で収集した研究資料を読み込むなど、国内でできることに力を傾注する。 とりあえず、コメニウス が書いた序文を邦訳し、「コメニウス の教育思想に与えたエラスムスの影響」という論文を完成させることに力を注ぐ。 また、「エラスムスにおける人間の尊厳」という論文の内容を充実させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
エラスムスの教育思想を研究する上で、海外での文献探索・収集は極めて重要である。2020年度における海外での文献探索・収集を充実させるため、あえて使わずに2020年度に繰り越すこととした。
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