研究課題/領域番号 |
19K02435
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
坂野 慎二 玉川大学, 教育学部, 教授 (30235163)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 教育政策 / 政策評価 / エビデンス / ドイツ / オーストリア / スイス / 教育報告書 |
研究実績の概要 |
2021年度は、それまで先行して行っていたドイツの教育政策評価研究に加え、オーストリア及びスイスの教育政策評価についての研究を文献による分析を中心に進めた。 ドイツの教育政策分析については、前年度に引き続き、2020年の教育報告書、2019年に出版された元MPIB(マクス・プランク教育研究所)グループの『ドイツの教育制度』(UTB)、同じく2019年に出版されたアベナリウスらの『学校法』(Carl Link社)等の文献及びインターネット検索により、かなり必要な文献を入手し、分析を進めることができた。 2021年度は新たにオーストリア及びスイスの教育政策及び教育政策評価についての分析を進めることができた。オーストリアでは、教育報告書が3年ごとに作成されるが、2021年に公表された教育報告書の分析を進めている。また、2018年に教育政策の実施及び評価についての組織改正が行われた。それによって、教育政策評価が重要視されていることが確認できた。それ以外の教育政策評価として、OECDのPISA調査がやはり重要視されているが、結果は向上しているとはいえない。 スイスの教育政策は、オーストリアと比較すると非常に分権制が強いことが明らかとなった。教育政策の評価は、教育報告書の作成とEDK(州教育長会議)が2007年に合意したHarmoS協定を26州それぞれに実現に向けて進めていることが確認できる。教育報告書は4年ごとに作成されている。その中心は連邦統計局による教育データの集積と、研究者によるその分析である。同協定の特色である就学前教育2年の義務化は多くの州で実現しつつあるが、義務化に消極的な州もみられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID19の感染拡大により、調査可能である時期に、対象国であるドイツ、スイス、オーストリアへの渡航調査が困難な状況であった。このため、各国の担当者への調査ができなかった。このため、文献研究に重点を置いて研究を進めた。 ドイツの教育政策分析については、前年度に引き続き、2020年の教育報告書、2019年に出版された元MPIB(マクス・プランク教育研究所)グループの『ドイツの教育制度』(UTB)、同じく2019年に出版されたアベナリウスらの『学校法』(Carl Link社)等の文献及びインターネット検索により、かなり必要な文献を入手し、分析を進めることができた。 2021年度は新たにオーストリア及びスイスの教育政策及び教育政策評価についての分析を進めることができた。オーストリアでは、教育報告書が3年ごとに作成されるが、2021年に公表された教育報告書の分析を進めている。また、2018年に教育政策の実施及び評価についての組織改正が行われた。それによって、教育政策評価が重要視されていることが確認できた。それ以外の教育政策評価として、OECDのPISA調査がやはり重要視されているが、結果は向上しているとはいえない。 スイスの教育政策は、オーストリアと比較すると非常に分権制が強いことが明らかとなった。教育政策の評価は、教育報告書の作成とEDK(州教育長会議)が2007年に合意したHarmoS協定を26州それぞれに実現に向けて進めていることが確認できる。教育報告書は4年ごとに作成されている。その中心は連邦統計局による教育データの集積と、研究者によるその分析である。同協定の特色である就学前教育2年の義務化は多くの州で実現しつつあるが、義務化に消極的な州もみられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、出入国の制限が緩和される傾向であるため、8月下旬から9月上旬にかけ、スイス、オーストリア及びドイツの調査を実施することを計画している。それによって、これまで進めてきた文献研究による分析結果を検証し、必要な修正を加えて研究成果をまとめる。 ドイツ語圏3か国の教育政策検証の共通点は、仮説的に以下のように集約できる。(1)OECDのPISA調査に代表される国際学力比較調査によって、国としての教育水準の確認を行っている。(2)学校修了段階における修了試験により、各州間による到達水準の相違についての調整を行い、教育の機会均等を確保しようとしている。(3)州間比較調査を行い、教育水準の低い州に、積極的な教育改革を促す。(4)教育の成果の検証を、中長期的な展望において実施している。(5)教育成果の推移を確認するために、『教育報告書』を作成している。これには、(a)広く国民に周知し、教育改革を進めることへの理解を得る、及び(b)教育成果が不十分な州に、教育改革を進行させるための外的環境を醸成する、という意図があることが読み取れる。 一方、教育政策の集権制についての相違点がある。これは連邦政府に大きな権限を委ねるのか、州政府に基本的権限を残すのか、という点である。オーストリアは連邦への集権制へと傾いている。一方、ドイツ及びスイスでは各州の権限であることを尊重した上で、各州教育大臣会議等で共通の教育政策枠組みを作成している。また、スイスでは、言語圏による教育政策の共通性を高めるという手法で教育改革を進めることにより、言語圏による多様性を尊重しながら教育の質的向上を追求している。また、学校の自主性・自律性について、学校評価による自己改善を支援するドイツ、スイスと、行政が主導するオースロイアでは異なる傾向がある。 こうした仮説的な成果を検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19の感染拡大により、調査可能である時期に、対象国であるドイツ、スイス、オーストリアへの渡航調査が困難な状況であった。このため、各国の担当者への調査ができなかった。代替措置として、文献研究に重点を移して、関連文献を収集し、研究を進めることとなった。 上記理由により、現地での聞き取り調査は、3年続けて実施できなかった。2022年度は、最終年度に当たるため、これまでの研究仮説を検証するための現地調査を実施する計画である。
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