研究課題/領域番号 |
19K02435
|
研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
坂野 慎二 玉川大学, 教育学部, 教授 (30235163)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 教育政策 / 政策評価 / エビデンス / ドイツ / オーストリア / スイス / 教育報告書 |
研究実績の概要 |
究を現地調査及び文献調査による分析を進めた。 ドイツの教育政策分析については、2022年及び2020年の教育報告書、2019年に出版された元MPIB(マクス・プランク教育研究所)グループの『ドイツの教育制度』(UTB)、同じく2019年に出版されたアベナリウスらの『学校法』(Carl Link社)等の文献及びインターネット検索により、かなり必要な文献を入手し、分析を進めることができた。また、コロナ禍の終息により、本研究として初めて現地調査を2023年8月から9月にかけて実施した。研究の成果として、2023年5月には、「ドイツ高等教育の拡大と多元化―医学健康科学領域の専門大学への移行―」を公表した。加えて「教育政策の立案・検証と教育研究―ドイツの事例から―」を日本教育経営学会大会(筑波大学、2023年6月)で、「ドイツ高等教育の量的拡大政策」を日本教育行政学会大会(千葉大学、2023年10月)で、それぞれ発表した。また、「教育政策の立案・評価と教育研究―ドイツの事例から―」及び「小学校高学年における教科担任制導入の経緯―教職員定数改善の視点から―」を2024年3月に執筆した。 スイスの教育政策については、2005・06年の改革の状況について2022年度の学会発表を基に、学部紀要論文「スイスにおける教育政策の検証に関する一考察―連邦制と協調主義における教育権限配分―」をweb上に2023年6月に公開した。 オーストリアの教育政策は、2022年度の学会発表と前後して、2021年から学校の質マネジメントシステム(Qualitaetsmanagementsystem fuer Schulen, QMS)が導入されるようになった。現在、その概要と改正の意義について整理、分析する作業を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID19の感染が拡大していたため、対象国であるドイツ、スイス、オーストリアへの渡航調査が2022年度までは困難な状況であった。このため文献研究に重点を置いて研究を進めてきた。文献研究は一定の進行をみた。ドイツの教育政策分析については、2022年及び2020年の教育報告書、2019年に出版された元MPIB(マクス・プランク教育研究所)グループの『ドイツの教育制度』(UTB)、同じく2019年に出版されたアベナリウスらの『学校法』(Carl Link社)等の文献及びインターネット検索により、かなり必要な文献を入手し、分析を進めることができた。2023年度はドイツにおける調査を実施し、日本では入手が困難な文献資料等を収集することができた。 スイスの教育政策は、非常に分権制が強いことを明らかにしてきた。教育政策の評価は、教育報告書の作成とEDK(州教育長会議)が2007年に合意したHarmoS協定を26州それぞれに実現に向けて進めていることが確認できる。教育報告書は4年ごとに作成されている。その中心は連邦統計局による教育データの集積と、研究者によるその分析である。同協定の特色である就学前教育2年の義務化は多くの州で実現しつつあるが、義務化に消極的な州もみられる。これらの成果を2023年3月に取りまとめ、web上にも同年6月に公開した。 オーストリアの教育政策は、2021年から学校の質マネジメントシステム(QMS)が導入されるようになった。また、教育報告書が2021年に公表された。現在、その概要と改正の意義について整理、分析する作業を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
教育政策の検証には多様な視点が必要である。政策立案・実施関係の文書はある程度分析を進めることができたが、研究者の批判的分析、教員や生徒らの視点による評価等の分析を進める必要がある。延長いただいた期間において、以下の方策で研究を深化させていくことを目指す。 ドイツでは、2020年に常設各州文部大臣会議(KMK)に常設科学委員会(SWK)が設置された。これは、研究者が政策を検証し、提言をまとめるための組織である。2021年以降に現在まで8つの勧告・提言等を公表している。 最終年度となる2024年度は、引き続き文献調査を進めるとともに、8-9月にドイツ及びオーストリアへの調査を予定している。これまでの文献調査研究を中心とした分析を検証する予定である。特に教育政策の検証と改善システムについて、中心的に研究を進める。ドイツのIQB(常設文部大臣会議の教育制度における質的開発研究所)、SWK(常設文部大臣会議の常設学術委員会)、オーストリアにおけるQMS(学校の質マネジメントシステム)のデータ集約と分析を行う学校制度質保障研究所(IQS)、スイスのEDK(スイス教育団人会議)等を機能と役割を中心に分析する計画である。 最終的には、ドイツ、スイス、オーストリアの学校教育の質保障システムを比較検討し、日本の教育政策への示唆を提示する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
訪問調査先との日程調整が十分に行えず、2回目の調査を実施することができなかった。このため、2024年度に再度訪問調査を計画している。
|