研究課題/領域番号 |
19K02445
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
吉村 敏之 宮城教育大学, 大学院教育学研究科高度教職実践専攻, 教授 (80261642)
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研究分担者 |
本田 伊克 宮城教育大学, 大学院教育学研究科高度教職実践専攻, 教授 (50610565)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 教育内容研究 / 科学と芸術の基礎 / 巨摩中学校 / 合唱「表現」 / 宮城教育大学 / 教育臨床研究 / 教授学 / 極地方式研究会 |
研究実績の概要 |
これからの教育で求められる「深い学び」の実現にむけて、教師の学習指導力を培う研究集団のあり方をさぐるため、以下の二つの事例を検討した。いずれも、学問・芸術の追求に教師たちが力を注ぎ、授業の質を高めた事実である。授業の内容と方法とを一体にとらえ、教材研究と授業研究とを結びつけたものに注目した。 一つは、学校現場の研究集団の取り組みとして、山梨県巨摩中学校の教師たちによる教育内容研究である。1964年から1976年にかけて「科学・芸術の基礎」を学ぶ授業の創造が目指された。すべての教科学習の「総合」ととらえられた合唱を指導した、埴原美枝子氏の実践に焦点を当て、楽曲の追求(教育内容研究)が表現の質の向上に、どのようにつながったかを解明した。「二人の擲弾兵」の授業では、ハイネの詩の解釈を深め、作曲者シューマンの思考をとらえた。さらに、優れた演奏を聴くことにより、イメージが豊かになった。 二つ目は、宮城教育大学と学校現場が共同して進めた、「教育臨床研究」である。林竹二学長(1969年~1975年)のもとで高橋金三郎が展開した「教授学」の拓いた可能性に、光を当てた。高橋は、「教授学」を「子どもにとって最高のものを、どうかして身につけさせたいと願う教師の生んだ工夫の数々をまとめた技術学」ととらえた。そして、「すべての子どもに高いレベルの科学をやさしく教える」ため、「極地方式研究会」を組織し、教師とともに授業研究を積み重ねた。すぐれた教師の実践によって生じる「子ども自身の考えと行動」をふまえて研究した。科学の「基本概念」すなわち「事実・法則でもきわめて多くの現象に適用できる、従って誰にも理解しやすい、使いやすい概念」の習得は、生活経験では不可能で、科学の法則性や系統性に基づく必要がある。そこで、教科書教材の解釈や系統を変え、子どもの学習の事実をふまえ、基本概念を確実に獲得できる筋道を求めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
斎藤喜博を核とした群馬県玉村・芝根・島小学校の教師集団による実践記録の収集、山梨県巨摩中学校の教師集団による実践記録の収集、実践を進めた教師への聴き取りなど、日本の優れた授業研究の成果を調査する活動が、コロナ禍では困難である。そのため、調査旅行再開にむけた準備として、すでに収集した資料をふまえ、教師集団のネットワークとして、地域・全国での民間教育研究運動との関連性を解明している。学校現場での教師集団による教育内容研究・授業研究を支えた、宮城教育大学における「教育臨床研究」の実態と特質を探っている。
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今後の研究の推進方策 |
斎藤喜博を中心とした群馬県小学校の教師集団による授業研究の成果が、宮城教育大学の教師教育の質向上にむけた「教育臨床研究」にどのようにいかされたかを解明する。 山梨県巨摩中学校の教師集団による、学問・芸術に根ざした教科内容研究について、科学研究費補助金(課題番号:22K02277)「科学と芸術の追求により『深い学び』を創る教師集団―巨摩中学校の教科内容研究」で、引き続き調査し、教職専門性高度化の指針とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために、予定していた調査旅行を実施できなかった。感染状況が落ち着けば、資料収集と聴き取り調査を行う。また、すでに収集した資料を、授業研究と教師教育に活用できるよう、データベース化を進める。
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