研究課題/領域番号 |
19K02462
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐藤 隆之 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60288032)
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研究分担者 |
宮本 健市郎 関西学院大学, 教育学部, 教授 (50229887)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 愛国心 / ダイバーシティ / ジョセフ・リー / ジョン・デューイ / よい市民 / 社会センターとしての学校 |
研究実績の概要 |
最終年度であることから、本研究の総括を行った。本研究では、愛国心の教育として遊び場協会の会長を務め、リクリエーション活動を重視したジョセフ・リー、多様性を保証する教育としてジョン・デューイに注目し、それぞれの思想やそれに基づく実践を分析した。その二つを比較して、それぞれが求める「よい市民」について、以下のような、共通点と相違点を明らかにした。 まず相違点としては、愛国心を重視するリーは、人間の本能を解放することが、「よい市民」に直結すると考えていた。それに対してデューイは、子どもの身体を教育の原理としつつ、個々の知性や思考を重視した。また、リーが移民排除とアメリカ化を積極的に推進したのに対して、デューイはそれには非常に慎重であった。さらにいうと、リーが市民の「よさ」を国内に閉じて「よいアメリカ市民」を論じ、それを世界市民のモデルとしたのに対して、デューイは科学の発達に伴う交通・通信の普及に注目し、国境を超えた「よさ」を追求しようとした。 そうではあるが、どちらも学校の教育を学校外にまで広げ、社会と関係づけて論じた点では共通する。リーは、学校にそもそも期待せず、遊び場協会のような社会組織において市民を育成しようとした。ただし、学校には、リクリエーション活動や奉仕活動の一拠点という位置が与えられた。デューイは、教育には制度的側面(意図的・計画的側面)と非制度的側面(付随的・偶発的側面)があり、後者は学校だけでは十分に実現しえないとした。それを補う意味で、学校をコミュニティと結びつけることを説き、「社会センターとしての学校」を主張した。結果的に、リーとデューイの学校像には共通点があったことになる。 このように愛国心を重視する立場と、多様性を重視する立場は、それぞれ独立した主張でありながらも相互に影響を及ぼし、ときに重なりあっていたことを明らかにした。
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