研究課題/領域番号 |
19K02465
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
渡部 容子 (君和田容子) 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (10259559)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 漸進的教育無償化 / 自治体総合施策 / 子育て・教育の地域共同システム / 施行時特例市 / 教育費支援 / 広報 / 切れ目ない支援 |
研究実績の概要 |
本研究は、国に先行する地域レベルの漸進的無償化施策等を手がかりに、「子育て・教育の地域共同システム」の合意形成を明らかにして、国レベルの制作立案や合意形成に資することを企図している。 都道府県を対象とした研究初年度(2019年度)、政令都市・中核市を対象とした2年次(2020年度)に引き続き、3年次(2021年度)は施行時特例市を対象として、①就学前段階、②義務教育段階、③後期中等教育段階、④高等教育段階、⑤その他の5区分で、教育費支援策について情報を収集し、市ごとの一覧を作成した。その際、住民がアクセスしやすい広報の在り方、妊娠出産・乳幼児期から青年期成人期に至るまでの切れ目のない支援への拡張、市区町村・都道府県・国による重層的で相補的な支援に着目した。 その結果、以下の7点が明らかになった。1)HP等へのアクセシビリティにおける配慮(多言語等)、2)子育て情報の提供におけるガイドブックの発行やスマートフォン等を活用した配信、3)就学前段階における子ども医療費助成などの独自支援、4)小中学校段階における塾代助成や放課後児童クラブ保育料補助などの独自施策、5)高校生・大学生段階における奨学金・特定職種修学資金・奨学金返還支援事業などの独自施策、6)ひとり親家庭に係る支援情報冊子等の作成や医療費助成の青年期までの延長などの独自施策、7)コロナ禍に関連した家計急変者の申請に係る注意喚起や国の支援に上乗せした助成などの独自施策である。 さらに、特徴的な自治体として鳥取県を採り上げ、関係者によるシンポジウム「子育て・教育の地域共同システム-鳥取県-」(非公開)を開催し、(1)産後ケア事業、(2)部活動費用の保護者負担、(3)低出生体重児支援、(4)放課後等デイサービスの4つのテーマに沿った報告から「子育て・教育の協働」について検討し、地域における協働の在り方について考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自治体施策については、(1)47都道府県・(2)20政令指定都市・(3)60中核市から抽出した20市に引き続いて(4)23施行時特例市について、各自治体の公式ホームページや関係諸団体のホームページ等ウェブを用いて詳細な資料収集を行った。研究成果は、渡部(君和田)容子、渡部昭男「教育費支援情報に関する施行時特例市の広報のあり方-漸進的無償化に係る自治体総合施策の研究(4)-」近畿大学生物理工学部紀要、第46号、2021年、PP.9-25に発表し、近畿大学学術情報リポジトリおよび神戸大学附属図書館学術成果リポジトリKernelでウェブ公開している。また、(1)~(4)の論稿をまとめた再訂版を冊子、渡部(君和田)容子『教育費支援情報に関する自治体の広報のあり方』麦の郷印刷、2022年(全72頁)として発行し、全都道府県および市町村の計1788自治体および議会図書室へ寄贈した。110自治体の教育費支援の広報の状況を知ることができ、基礎的な資料として好評を得ている。なお、同冊子についても、近畿大学学術情報リポジトリにて全文をウェブ公開している。 鳥取県については既知の関係者の協力によって、ウェブ会議等を重ねて2022年1月29日にシンポジウムを開くことができたが(しかし準備が不十分な点もあり非公開とした)、他地域の調査はコロナ禍で往来や訪問での聴き取りが難しいのみならず、自治体関係者の多忙などから実現していない。そのため、2022年度への延長申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2022年1月29日に開催した非公開シンポジウムの内容を発展させて、紀要投稿や学会発表、まとめの冊子の作成などを考えている。また、鳥取県および他地域での子育て・教育の協働や自治体施策に関する調査が、コロナ禍においても可能な状況であれば、追加的に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、現地調査や関係者の招聘、対面での公開シンポジウムの開催などが実施できず「旅費」や「人件費」の支出が減じ、代替措置として研究成果を冊子として発行し全都道府県市町村へ郵送したため「その他」の項目が増加したものの未消化が生じた。 次年度は、未公開シンポジウムの成果公表(冊子発行)と関係者への送付に残金を使用する計画である。追加調査が可能であれば、合わせて実施する。
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