本科学研究事業の研究課題は「人口減少時代における地方発参加型教育実践の比較研究による新しい中等教育原理の探究」である。2つの類型を比較研究した。 第1類型は「地域アイデンティティ」の形成を狙いとした「地域学習」の効果に関する研究である。その成果は2021年度に報告書として発表した。第2類型は、地方発参加型教育実践の研究である。2023年度にふたつの報告書を発表した。 池田町議会と道立池田高校の連携で行われている「池田町高校議会」について、2023年4月に「地域への議会を通じたコミットメントが高校生にもたらしたもの――「池田町高校生議会」実践の事例研究報告書――」(http://hdl.handle.net/2115/90711)を、鹿追町議会と道立鹿追高校の連携で行われている「鹿追町高校生議会」について、2024年3月に「地域探究学習と「高校生議会」実践の連携が高校生の意識をどのように変えたか : 「鹿高生による高校生議会」実践の事例」(http://hdl.handle.net/2115/91537)を発表した。 3つ研究を通じて、分かったことは研究課題として掲げた中等教育再編の方向性である。特に、地方の生徒が衰退する地元にアイデンティティをもつためには、地域に深く関与すること(「知ること」と「関わること」)が有効であった。さらに、関与して分かったことを、「高校生議会」という形式で議員=町民代表(主権者)として首長部局と対等な立場から議論し、それを大人側が真摯に受け止めることが、自らが町の「若き担い手」であると知ることに結びつけていた。すなわち、地域課題の探究と議会・学校の連携による主権者教育の取り組みの連携が、地域課題を自分事として探究することに誘う有効な取り組みであることが実証できた。特に、女子高校生が自らで地域を変えうるという展望をもつことが重要であることが分かった。
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