研究課題/領域番号 |
19K02471
|
研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
竹下 浩 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (30629671)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 障害者就労支援 / スキル開発 / 視覚障害者 / グラウンデッド・セオリー・アプローチ / 訓練プログラム開発 / 社会的アウトカム |
研究実績の概要 |
1.具体的内容:前年度の「全体モデル」(事務系職種で働く視覚障害者の就労スキル獲得プロセス)に加筆、出版(10月)した。当事者と上司の「関係性変容」についても分析、日本教育心理学会第62回総会(9月)で報告した。 検討過程で、「個別モデル」についても分析する必要性が判明した。そこで新たに4社15名(本人8名・上司7名)からデータを収集、新たな分析テーマと分析焦点者で分析した。「全盲/弱視別」モデルは上司分析をニュージーランド心理学会年次大会(8月)、本人分析を日本質的心理学会第17回大会(10月)で報告した。「一般企業/特例子会社別」モデルについては、上司分をアイルランド心理学会50回記念大会(11月)で報告、産業・組織心理学部門賞の最終候補に選抜された。 例えば「全盲/弱視別」モデルにおける「上司の雇用観」は、上司分析では、全盲モデルは「嘱託」「正社員」、弱視モデルが「契約社員」「持て余し」「タスク限定」「歩み寄り型」である。一方本人から見た「上司の管理方略」は、全盲では「当事者の能力開発」「環境面の配慮」「仕事境界の設定」、弱視は「非開示の限界設定」「相互越境の仕事開発」「晴眼者基準の押し付け」である。いずれも本人の就労スキル発達が望ましい段階への移行に影響している。 派生職種として協力が得られたヘルスキーパーについても、予備的分析を日本応用教育心理学会第35回研究大会で報告した(12月)。 2.意義と重要性:属性で分類するのではなく、分析過程で理論的に「一般企業と特例子会社」「全盲と弱視」の文脈的固有性が浮上し、異なる理論モデルが発見されたのは、研究成果の現実の問題への応用可能性を向上した。これから事務職を志望する当事者や初めて受け入れる上司が状況を改善することを可能にする。 ヘルスキーパーについては、理学療法士と同様将来的な研究対象であり、予備的分析を行ったことは意義がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」(「視覚障害者の就労スキル獲得プロセス理論の生成」と「スキル訓練教材の開発」)は不変である。前者に関してはR1年度とR2年度においてほぼ予定通りの成果が得られており、後者に関しても既に着手している。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度のデータ収集と分析が想定より進んだため、2年目に予定していた上司分析は1年目に並行して行うことができた。結果、研究の進め方について有用な示唆が得られた。当初3年目に予定していた「大学生の職業選択」は既に分析結果の一部として得られており、それよりも「全盲と弱視」「一般企業と特例子会社」別に分析した方がより現場で有用な理論が生成できることが示唆された。 そこで以下のように修正することとした。R1年度:本人と上司の全体モデル生成(済)、R2年度:全盲/弱視、一般企業/特例子会社モデルの生成(済)、R3年度:訓練教材の作成、R4年度:教材の実践での応用と検証。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大による対面式データ収集のウェブ方式への変更等で次年度使用額が生じた。翌年度の物品費等で充当予定である。
|