研究課題/領域番号 |
19K02472
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荻野 亮吾 東京大学, 高齢社会総合研究機構, 特任助教 (50609948)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コミュニティ組織 / サードセクター / 社会関係資本 / パートナーシップ / 公民館 / 実効性 / 持続性 / 子どもの貧困問題 |
研究実績の概要 |
本研究は,コミュニティ組織の実効性と持続性を,比較事例分析により明らかにすることを目的にする。 研究開始当初より,地方創生政策のもとでコミュニティ組織が実効性(地域の課題解決機能)を強めるにつれて,NPO法人に代表されるサードセクターとの組織間距離が縮まっていることを確認した。そのため,申請段階で想定していたコミュニティ組織から,分析の範囲を広げたサードセクター論のレビューを行うこととした。具体的には,サードセクターの網羅する範囲,その機能,他のセクターとの混合組織の状況に関する雑誌論文を執筆した。この作業により,サードセクターの機能を,公共サービスの提供,アドボカシー,市民形成・社会関係資本の醸成から捉える視点や,政府/企業/コミュニティ組織との混合組織の拡大により,サードセクター自体の範囲が広がりつつある状況を明らかにすることができた。 この研究レビューと並行して,子どもの貧困問題に取り組むサードセクターと行政とのパートナーシップの事例を分析し,サードセクターの実効性を高める官民の関係性に関する学会誌論文を執筆した。分析の結果,行政からの委託を受ける関係性,行政と政策を共同立案する関係性,そして日常的な情報交換を行う関係性の3つが見出された。これら3つの関係性は,行政が行うコミュニティ組織への支援を類型化する際に役立てることができる。 さらに,研究代表者がこれまで各地で進めてきた事例の類型化を行った。公民館を中心としたコミュニティ組織が,福祉と教育,学校と地域の協働,まちづくりと自治という3つの領域で,地域における社会関係資本を築く過程に関して雑誌記事を執筆した。この分析視角は,コミュニティ組織の実効性と持続性の連関を考える上で有用である。 以上のように初年度は,コミュニティ組織の実効性や,官民の関係性に関して,実際の事例に基づく類型化を中心に研究を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は,当初想定していた範囲より広く,コミュニティ組織やサードセクターに関する研究レビューを行うことができた。このレビューによって,コミュニティの組織の実効性や,官民パートナーシップに関する事例研究の枠組みが整理された。ただし,現時点では,断片的な整理ではあるため,2020年度には,本研究の目的に沿って総括的なレビューを行う必要がある。 本研究の中核をなす事例研究については,フィールドとの調整が予定より遅れているものの,これまでの事例研究の整理を中心に,研究を進めているところであり,想定するスケジュールから,大きく遅れてはいない状況である。以上の状況を勘案した上で,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は,サードセクターに関する理論研究を進めただけでなく,実際の事例研究に基づいて,実効性や持続性に関する研究の枠組みの検討を行うことができた。 しかし,新型コロナ感染症の影響によって,当初想定していたより,事例研究の進捗が遅れている。現在は,2020年度以降,継続的に研究を進めることのできるフィールドの選定や調整を行なっている状況である。例えば,神奈川県鎌倉市や滋賀県近江八幡市では,コミュニティ組織が中心となって進める,地域課題や住民のニーズを把握することを目的にした,質問紙調査の設計・分析に関わってきた。このような取り組みを契機にして,事例研究にふさわしいフィールドを選定していく。また,場合によっては,申請者がすでに行ってきた事例研究の再整理に取り組むことによって,研究目的を達成する方策も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究の初年度であり,レビュー研究を中心に行ったため,物品費の支出が多くなった。新型コロナ感染症の影響もあり,年度後半に予定していたフィールド調査を実施することができなかった。このため旅費の使用額が想定より少なくなり,次年度使用額が生じた。 次年度は,感染症の影響を考慮し,当初の研究目的を達成できるよう,研究計画を一部変更して,着手できるところから,事例研究を進めていく予定である。
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