社会の変化が目まぐるしく、複雑で予測困難となる中、ニューノーマルにおける教育のあり方として、「一人一人の多様な幸せと社会全体の幸せ(ウェルビーイング)の実現」が目指されている。本研究では、学校教育において、ストレス対処能力形成だけでなく、ウェルビーイングの向上を目指した取組が重要であるという前年度までの研究成果を踏まえて、2021年度(最終年度)は、(1)児童生徒のウェルビーイングの実態把握と、(2)生徒のウェルビーイング向上に資する教材開発を行った。 (1)児童生徒のウェルビーイングの実態把握:学校場面における児童生徒のウェルビーイングの様相を明らかにするために、小学生(143名)および中学生(744名)から得た自由記述データを分析した。ウェルビーイング要因を「自分(イントラパーソナル)に関すること」「社会的関係性(インターパーソナル)に関すること」「全体の在り方(エクストラパーソナル)に関すること」の3つに分類した結果、「自分に関すること」には、「問題が解けたとき」「授業で発表してほめられたとき」など、学習領域に関する記述が多くみられた。学校における児童生徒のウェルビーイングを規定する要因は多岐にわたるが、授業内容の理解を促す働きかけがウェルビーイング向上に資する可能性が示唆された。 (2)生徒のウェルビーイング向上に資する教材開発:学校におけるウェルビーイング向上を目指して、授業内容の理解を促すための教材開発を行った。中学生(1~3年生;378名)を対象にICTを活用して動画教材を視聴させたところ、事後において生徒の興味や学習意欲が有意に高まったことが示された。
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