研究課題/領域番号 |
19K02482
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研究機関 | 八戸工業大学 |
研究代表者 |
松浦 勉 八戸工業大学, 工学部, 教授 (30382584)
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研究分担者 |
佐藤 広美 東京家政学院大学, 現代生活学部, 教授 (20205959)
一盛 真 大東文化大学, 文学部, 教授 (90324996)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植民地支配責任 / 戦争責任 / 水俣病 / 沖縄戦 / アジア認識 / 差別 / ナショナリズム / 優生思想 |
研究実績の概要 |
2019年度末を迎え、研究活動に一部支障と停滞が生まれたが、一定の成果も生まれた。 研究代表者の松浦は、分担研究者の佐藤広美が2018年度に上梓した『植民地支配と教育学』(晧星社刊)について、教育雑誌に「書評」を書き、その積極的な意義を5点指摘した。この佐藤の著作は、前回の科研費の共同研究の成果である。また、2018、19の両年度より、小学校と中学校でそれぞれ「道徳の時間」が教科化されたことを受けて、学内紀要で、道徳教育をめぐる戦中と戦後の問題を教育学的に検討した。日本の道徳教育は、総じて学校全体の教育活動を通して自律的に実施されるのではなく、学校儀式や特別活動などに補完された官製道徳教育として実施さてきたことを考察するとともに、こうした主流の実践とは異なる、全面主義の実践に関する近年の事例の分析も併せて行った。 分担研究者の佐藤は、同じく前回の共同研究の成果の一部となる『災禍に向きあう教育』を発表した。また、国定教科書「国史」他の教科書のなかの「韓国併合」の位置づけについて分析を行うとともに、日本の植民地教育政策とモラルのあり方について、その「相克」に焦点をあてて、追究している。また、学会報告をもとに、朝鮮の植民地官僚の教育思想の分析をおこなった。 分担研究者の一盛真は、沖縄をフィールドとして、「戦後日本における教育(学)と民族」を追究している。ただし、今年の2~3月に予定していた沖縄での長期の調査活動を断念せざるを得ない状況に追い込まれ、史料収集も論点の整理も必ずしも十分に行い得ていない。業績としては、前掲、佐藤の著書『植民地支配と教育学』を、学会主催の合評会での検討をふまえて、佐藤の研究の特徴を、研究史の中で位置づける書評論文にまとめたた。また、研究テーマとのかかわりで、貴堂嘉之著『移民国家アメリカの歴史』(岩波新書)の「書評」を、教育雑誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「コロナ禍」による研究出張の中止を余儀なくされた分担研究者もおり、加えて所属する学内事情などにより、当初予定していた研究成果が十分に形あるものにできなかったこと等もあって、遅れが生じている。日程調整がうまくいかずに、一回だけ開催された研究会に参加できない分担研究者も出た。今年度も3か月ちかく経過しているが、挽回するほかない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の具体的なテーマに即して、3名が各自課題を追究する。そのためにも、例えば研究代表者の松浦は、<戦争教育学>から「戦後教育学」に転じた海後宗臣ほかの教育学者の著作や関係史料などに目を通し、論点を明確にし、批判的に分析を加え、具体的な研究成果に結実させる努力を重ねていかなければならない。そのための研究会の開催も、定期的に行っていく必要がある。2名の分担研究者も、海後との距離関係をいしきしながら、勝田守一ほかの教育学者の戦中から「戦後」への転回と展開を究明するとともに、竹内好の議論を中心として戦後日本の教育(学)と民族問題を追究するための論点の整理と見通しを明らかにし、相互に確認していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内での仕事などとの関係で、3名の日程の調整がなかなかつかず、東京での研究会が1回しか開催できなかったうえに、とくに、分担研究者の1名が今年の2~3月に予定していた長期の調査活動ができなくなったことなどがある。 先行関連文献と史料の調査・収集とそのための調査活動を積極的に行い、生産的に使用していきたい。
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