本研究は、生活課題としてのワークライフバランスの実現が個人の選択だけでなく社会の諸制度や経済的・文化的状況に規定されることを踏まえて、自分とは異なる労働と生活の状況や価値観を生きる他者と出会い、自己と他者との間に共通性を見出すための省察・対話・学習の場について展望することを目的とした。しかし、最終年度においても、新型コロナ・ウイルス感染症の感染拡大の中で、予定していたフィールドワークや対象者へのインタビュー調査は実施できなかった。 そのため、研究分担者との協議の上、最終年度は理論研究を中心に取り組むこととなった。具体的には、以下3つの観点から検討を行なった。第一に、ワークライフバランスの実現という現代的課題とこれまでの地域を中心とした社会教育との関係や課題の整理である。第二に、ライフの具体的な想定として政策上かつ実践上の核となる「家族」について、複数の立場からの議論や課題の整理である。第三に、「自分とは異なる労働と生活の状況や価値観を生きる他者との出会い」の具体例として、女性管理職を対象にした企業や職種を超えた人材育成研修の場における学習の分析である。 当初の計画とはやや異なる枠組みでの研究活動になったものの、理論的検討についてはおおよそ整理することができた。他方、残された研究課題として、「自分とは異なる労働と生活の状況や価値観を生きる他者と出会い、自己と他者との間に共通性を見出すための省察・対話・学習」をインタビュー等を通じて実証的に検討すること、かつ、その成果を踏まえて社会教育実践を展望することについては、十分に深めるには至らなかった。
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