研究課題/領域番号 |
19K02485
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
小野 文生 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (50437175)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ホモ・パティエンス / 弱さに基づく知 / 技術的合理性 / ユダヤ思想 / レヴィナス / アガンベン / 石牟礼道子 / 鶴見俊輔 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究は、計画書で設定した4つの研究軸にしたがって文献・資料の調査・分析と理論状況の把握に努めた。(1)「弱さに基づく知の系譜の思想史的検討」については引き続きアガンベン、ヴァッティモ、鶴見俊輔、石牟礼道子などの哲学・文学、「弱さ」をめぐる臨床哲学、文学、教育学、心理学、医療実践関連の文献の読解をすすめた。(2)「ユダヤ思想における受苦思想の遺産の考察」については、ひきつづきショア関連、ホモ・パティエンス思想、レヴィナスなどの読解をすすめた。(3)「受難経験から生み出される思想の検討/フィールド研究」は、新型コロナウィルス感染拡大のために活動を著しく制限されたが、感染予防に努めつつ水俣でのフィールド調査、ハンセン病療養所内の雑誌『愛生』等の関連文献の読解をすすめた。(4)「技術的合理性に関する哲学的考察」については、ひきつづきフランクフルト学派の技術研究を調査・読解した。 本年度の研究実績として、これらの成果の一部を、国際学会誌論文、国内学会誌報告、一般向けの書籍などで公表することができた。 また、本研究の成果として博士学位論文(『〈非在〉のエティカ――ホモ・パティエンスの人間学のために』) を完成させたが、この学位論文の内容をさらに発展させ、2冊の学術書に書き改める作業をおこなった。 新型コロナウィルスの感染拡大により、予定していた国内フィールド調査の一部は不可能となり、海外でのフィールド調査および国際学会への参加なども不可能となったため、研究活動が大幅に制約を受けた。とはいえ、そのような制約下においても可能なことを探しつつ、今後も研究を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年目にあたる本年度は、中間総括的な成果としてまとめた学位論文をもとに、2冊の研究書の公刊を目指して執筆をつづけた。今後これをひとつの礎石としてさらに新しい成果を生みだしていきたい。そのために必要ないくつものアイデアが自分自身のなかで拡散と収束を繰り返しており、これは主観的に判断すれば「良い状態」である。 新型コロナウィルスの感染拡大によって、予定していた国内外のフィールドワークや海外渡航が大幅に制限されたが、そうした制約下において可能なことを探して対応していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究の根幹にかかわるような、特別な推進方策の変更の必要性は、現段階では感じていない。ただし、新型コロナウィルスの感染拡大による、フィールド調査、海外渡航、国際学会への参加が今後も著しく制限されることが予想される。今後の動向を見極めながら、可能な調査の方法を考え、人脈を生かしながらオンラインでの研究活動の道を探っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響によって、当初予定していた海外渡航(調査、学会参加など)および国内フィールド調査を実施することができず、学会参加や調査にかかわる旅費や発表にかかわる経費の支出が無かったためである。2022年度は、国内外の調査や学会発表の機会を確保して、計画的に使用したい。
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