本来最終年度であった2021年度も、引き続き海外渡航が困難な状況のなか、入手可能な学校文書や新聞記事のうち植民地期のものを読み,オンライン発表を実施した。それらでは「身体髪膚」にこだわってアプローチを試みた。具体的には、思想の導入にともなう入浴習慣の事例を紹介し,非支配層からも断髪や日本式 入浴の導入を受容する人びとが現れること,それは男性から始まること,日本ではなく「文明」への捷径とみなされたことを報告した。さらに「学校文化」として現代も当たり前のように行われる「誓い」の一つとして「皇国臣民の誓詞」も存在した可能性を指摘した。 コロナ禍のために1年延長した2022年度は、課題である「声・音」にこだわり、唱歌と万歳に着目して、国内出張(沖縄離島)などを実施をふくめた調査研究のうえ以下のように各所で報告することができた。(1)「植民地期朝鮮における一地方の初等後教育実態 ―「載寧商業学校」生徒の日記を読む― 」歴博基盤共同研究「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」研究会 2022年9月15日(2)「「帝国日本」の学校儀式 」京都大学人文研アカデミーシンポジウム 2023年2月11日 (3)「「君」をことほぐための模索-万歳か唱歌か(先島諸島の学校誌から)-」青森中央学院大学共通研究費成果報告会 2023年3月21日 延長年度に至って、研究内容に加えようやく「声・音」に着目した教育史研究の方法を体得しだしたようである。引き続き次の科研課題を中心に、本課題で得た方法と知見とを深める予定である。
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