本研究では、まず植民地・日本内地を問わず学校日誌や沿革誌など、学校保存書類にあらわれる学校儀式や行事の実態に迫った。『学校沿革誌』によって、近代学校の有した普遍的特質と、地域事情に根差した特有さとを、並行して把握することを目指した。例えば「運動会」という日本に特有の行事の歴史を紐解き、男女に期待されていることに顕著な差がみられる点や,1945年以降の台湾や朝鮮半島での学校文書書記文化の継続性、琉球以来の会所による漢籍教育と、学校教育との間で起こる相克の一端などを明らかにした。後半では次の課題への足掛かりとして、植民地や日本内地の「辺境」における唱歌と万歳に着目して調査を開始した。
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