研究課題
基盤研究(C)
本研究は、近世日本における読み書き能力の育成が、寺子屋などのような、教育のための独自の過程の発展に支えられつつも、職業的能力形成の過程へと接続して完結するという性質を有していたことについてあきらかにするものである。このため、各地の図書館、文書館、および所蔵家などから往来物(近世日本における読み書き教材)を収集し、その内容、およびそれらの教材が作成された背景などを考察した。これにより、それらの教材が形成した文書作成にかかわる実務能力について検討を加えたものである。
日本教育史
本研究は、文字の読み書きという人間の実践についての歴史的研究である。このような実践は、言うまでもなく近代学校以前においても営まれてきたものであるが、近代以前においては、近代学校以後とは異なり、文書作成というより実務的な実践と結合しながら読み書きの学習が行われていたことが、その大きな特徴となっている。本研究では、訴状作成にかかわる往来物の事例的な検討により、このような社会的性質の一断面を明らかにすると同時に、日本における読み書きの歴史全体に位置付けて考察したものである。