研究課題/領域番号 |
19K02496
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
上田 孝典 筑波大学, 人間系, 准教授 (30453004)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中国 / 社区教育 / ガバナンス |
研究実績の概要 |
本年度も、新型コロナウィルス感染症のために海外渡航が難しく、国内での文献、インターネット等を利用した調査、およびオンラインで現地研究者との情報交換などを行った。とくに四川省成都市の教育ガバナンスの最新動向について、社区教育の展開や社区治理学院に関する情報収集を行い、中国独自のガバナンス概念に基づく地域住民への統治のあり方について検討した。街道政府や居民委員会によって様々な社区教育が展開しており、多くの地域住民の参加や活発なボランティア活動がみられるが、そこに住民参加による協議の場はなく、共産党や行政幹部で構成される社区教育委員会が計画した事業に、参加者として動員されている地域住民の実態が看取された。公権力による不可視化された圧力で疑似的な自発性を涵養するところは中国独自のガバナンスのあり方だと考えられる。しかし、地域における子どもたちへの教育的取り組みは概観できたものの、地域と学校がどのような協力体制を図り、双方の関係性が構築されているのか、その連携の実態については課題が残された。例えば校本課程や選択科目として地域の協力を得ていかなるカリキュラムが用意されているかなど、素質教育の重視という方針の中で既存の教科にとどまらない取り組みが進められている。こうした実態について、学校への調査についても行いたい。 研究の成果は、2021年9月に開催された日本社会教育学会で研究発表を行い、また11月に上海教育科学研究院主催の国際会議 ”Lifelong Education and Learning Cities Development Forum”で研究報告を行った。これらについては論文としてまとめ、近く公開される見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症が終息をみない状況において、厳格な感染予防措置を講じている中国では長期の隔離期間が要求されている。そのため、現地への訪問調査が行えず、参与観察、実態調査の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
可能な限り現地の研究者の協力を得てオンラインでの調査を試みるほか、研究対象の都市を拡大し、日本で入手できる情報収集に努める。また中国への渡航条件が緩和されれば、現地に訪問し調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査に係る旅費や謝金等の支出ができなかったために次年度使用額が生じたが、可能な限り現地での調査を行えるよう対策を講じ、また研究成果を社会に公表するための費用などで有効に支出したい。
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