2022年度は、大きく三つの目標を立て、そのいずれに関しても成果を上げることができた。(1)集合的記憶に関する定評あるテクストの邦訳書(エアル 2022)を刊行する作業を通じて、理論基盤を固めた。(2)継続的に進めてきた共同研究の成果を論集(山名淳編 2022)として刊行することができた。(3)演劇「あの夏の絵」に関する理論的および実践的な検討を遂行し、その成果をまとめた(論文として2023年前半に刊行予定)。 国際的なネットワーク構築に関して言えば、2022年度も新型コロナウイルス感染症の状況をみながら難しい状況が続いたが、そうしたなかでも考えられる範囲内で最大の活動を行うことができた。研究代表者がこれまでも積極的に情報交換を行ってきたドイツ人研究者(フランクフルト大学のアストリッド・エアル教授、ドルトムント工科大学のローター・ヴィガー名誉教授、テュービンゲン大学のマルクス・リーガー=ラーディヒ教授)との連携を深めた。その成果を刊行することができ(Wigger/ Dirnbeger 2022)、また韓国(ソウル大学校)およびドイツ(フランクフルト大学)において、研究成果を報告する機会を得ることができた。また、アート関係者とのワークショップに参加するなど、学際領域へのアクセスも試みた。 以上のような諸活動を通じて、国内外の「記憶の教育学」に関する共同の研究基盤を形成することができた。本科研の締めくくりとなる2022年度は順調に活動を遂行することができた。今後はこうした成果の延長線上でさらに「記憶の教育学」を充実させていきたい。
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