本年度は、Society 5.0に対応すべく急速に進む公教育の構造変容という新たな問題状況をふまえて研究を進めた。カリキュラムや授業の中身やあり方に関わる、研究目的①に関しては、資質・能力ベースのカリキュラム改革の延長線上に、公教育のバージョンアップをどう図るのかについて考究した。具体的には、「個別最適な学び」を「主体的・対話的で深い学び」と統一的に実現する道筋について考え、「真正でインクルーシブな学び」という教育実践のヴィジョンと、それに基づく単元設計や授業づくりの方法論を整理した。さらに、「学びの舞台」を軸に単元を設計し評価する、新しい観点別評価のあり方を提起した。 学校としての組織的な実践改善の方法論に関わる研究目的②に関しては、学校や教師の仕事のコアな部分を見極めながら、保護者や地域社会や民間サービスなどとの連携も含めた学校経営のあり方について検討し、教職の専門性と専門職性をめぐる論点についても整理した。そして、目指す子ども像として明確化されたヴィジョン(価値)の探究を通して学習する組織を生み出す、ヴィジョン・ドリブンの学校改善の方法論を理論的・実践的に精緻化した。 こうした、学校ぐるみの授業改善を軸にしたカリキュラム・マネジメントの方法論については、大阪府教育センターや広島県教育委員会などにおいて、高等学校教員の研修プログラムとして具体化されており、オンライン等で研修の設計の助言や研修の提供を行った。また、「真正の学び」に向けた授業づくり、ICT活用の方法論、学習評価のあり方などについても、全国各地の教育センター等で研修を提供したり、初等・中等教育段階の教員とアクション・リサーチを展開した。 上に述べたような研究成果については、著作や論文として発表するとともに、公開シンポジウムに招待されるなど、自らの専門分野以外の教育研究の諸学会において、広く発表することができた。
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